卓球を料理に例えよう

私が普段接している中学生たちの「卓球の道のり」を、料理をする一日に置き換えて考えてみます。

 

料理をしたことのない人たちは、まず作る料理の種類を決めます。(戦型の決定)

和食、中華、はたまたフレンチ、イタリアン。

キッチンの管理人が洋食好きで、「和食お断り」なんてことも時々起こります。

たまたま和服を着ていたのを見て、君は和食だと勝手に決められてしまうことだってあります。

 

料理の種類を決めたら、スーパーに買い出しに行きます。

彼らは料理用の食材を見るのは初めてで、おすすめの食材や特価セールの食材を手に取り、香りをかいだり試食したりします。(各技術の練習)

どんなスーパーに行くかで最終的な料理の質が変わってきます。肉も野菜も置いてあるお店もあれば、魚しかないけれど一級品ばかりというお店もあるでしょう。

入店するのにお金のかかる高級スーパーや、個人的なツテから個人商店に向かう生徒も中にはいます。そのような場所では食材の選び方から調理方法まで、丁寧に教えてくれます。高級スーパーには様々な調理レベルの人が来店し、料理をするスペースもあります。それを眺めながら参考にすることだってできます。(クラブや個人コーチ)

キッチンの管理人さんが、知り合いの業者をキッチンに招いて食材の紹介をしてもらうこともあるでしょう。(外部協力者)

 

いろいろな食材を手に取りながら、具体的な料理の姿を想像し、どの食材を使うのかを決めていきます。(技術の得意不得意の判別、技術の選択)

 

Aさんはキノコ入りのシチューを作ることに決めました。

訪れたスーパーには、必要な食材が一通り置いてあります。

米とソースは気に入るものを見つけられましたが、肉と野菜類がどうもしっくりきません。大きすぎたり価格が高すぎたりと、選ぶのに時間がかかりそうです。(技術によっては試合で使えるようになるまでに時間がかかる)

 

手早く美味しくできるのはカレーなので、多くの料理人たちはカレーを選びます。しかもご飯は用意せず、カレールーだけに専念します。

しかしAさんは、カレーより具材の種類が多いシチューです。さらにお米も炊かないといけません。カレー星人たちよりも、具材を選りすぐるのに手間がかかります。

 

選ぶのに時間がかかってしまって、料理が完成しない人も出てきます。

運よく食材を選び終えた人たちは、食材を持って大急ぎでキッチンへ帰ります。

 

さぁここからが大変です。

それぞれの食材をどう切ったら良いか、鍋の火の加減は、具材を鍋に入れる順番は、何分火にかけるのか、などなど考えなければいけないことは山積みです。

とにかく時間が無いので、それぞれ思い思いに切り一口サイズにするのですが、大きさが不ぞろいです。過熱に関してもなんとなく柔らかくなればいいやと、乱雑になってしまいます。

 

大忙しでしたが、なんとか料理が完成しました。

それぞれ思い描いた料理に、何とか近づいたようです。周りで眺めている人たちも、彼らが作った料理が何なのかは分かるようです。

 

しかし美味しい料理とは言えず、工夫や鍛錬の余地があります。

まだまだ人様に食べさせられる段階ではありません。

 

この一日が終わっても料理を続ける人たちは、もう一度食材を選びなおしたり、調理方法を修正したりしてもっとおいしい料理を目指すでしょう。その過程で、必ず新しい発見があるはずです。知らない調味料に出会ったり、新しい鍋を貰ったり。

料理の世界は終わりがないことに気が付くでしょう。

 

 

 

・・・などと考えながら、中学三年で卓球を辞めてしまう人たちがいることを嘆いています。

彼らは一通りやったつもりなのかも知れませんが、まだ食材を選んでいる最中なのです。私くらいでようやく、食材を買ってきて調理器具の使い方を練習しているといったところです。買ってきた食材が傷んでいて、買い直しに行かないといけないなんてこともあります。

 

もっともっと、知らない感覚とか知らないボール、知らない世界があるということを知らないまま卓球とサヨナラというのは、1ファンとしてとても寂しいですね。

 

どうしたものか…。

 

 

(おわり)