卓球と初心者指導(仮)

中学校の卓球部における指導について、主に考えていきます。

試合で声を出すか出さないか

練習でとても嬉しいことがありました。今回はそのことと、試合で声を出すかどうかについて考えます。 

 

推測の正しさが示された

三年生のカット型Aさんについて、彼女は試合で声を出さない方がパフォーマンスが上がるのだろうと推測しており、声を出すことが集中を阻害してしまうタイプと見ていました。総体の前に本当のところを確認しておきたいと思い本日の練習終わりに聞いたところ、出さない派だとのことでした。試合に集中すると自然と声が出なくなっていくとのことで、私の推測に大きな誤りが無かったことを大変嬉しく思いました。あぁ、私もそこそこ観察できているんだな、と。こういうところで本人の考えとズレがあると、今まで何を見てきたんだという話になってしまいます。

 

この推測を立てたきっかけは、今年度になってAさんのベンチに入った時に声が出ていない試合が見られたこと、学校で私とゲーム練習をする時に声が出ずチームメイトとする時には声が出ていたことでした。比較的余裕のある相手の時には声が出ている傾向があることに、大会や練習で気付いたのです。そこで冬の試合の映像を観返してみると、やはり競るような相手や格上との対戦時には声が出ていません。また、1セット目は出ていてもゲームが進むにしたがって(戦況は良いのにも関わらず)声が出なくなっていく様子が確認できました。

相手が同格や格上で、なかなか思うように得点できないから声が出ないのかなとも思いましたが、ゲーム序盤に出ていたものが中盤、終盤に出なくなることからゲームに入り込んで自分と相手だけの世界に没頭していくタイプなのではないかと推測したのです。

 

自分の推測が合っていたことは嬉しいですが、それで調子に乗って思い込みが始まったり思考が停止したりすることは避けねばいけません。Aさんが声を出していないから順調なんだとも限りませんので、声だけでなく表情やちょっとした仕草を見逃さないようアンテナを張り巡らせなければいけないと思います。

 

声を出す人、出さない人

ここでは、試合で終始積極的に大声を出す選手をL(=Loud)タイプ、得点してもあまり声を出さずガッツポーズもほとんどないような選手をC(=Calm)タイプとします。

それぞれのタイプに該当する選手の特徴と、私が考える各タイプにおける注意点を述べていきます。

 

例として国内外のトップ選手で有名どころを挙げますと以下の通りです。(敬称略)

[Lタイプ]

森園政崇、張本智和

[Cタイプ]

丹羽孝希、陳衛星

Lタイプ

私が思い浮かべたのは上記の二人です。世界を舞台に活躍する20代以上のトップ選手で、彼らほど大声を出し続ける選手はいないかな…。こう書くと大声プレーヤーに対して私が否定的な立場だと誤解されるかもしれませんので申し上げておきますと、大声を出すことが選手本人にとって一番いいならそうすべきだと考えています。相手に向かって威圧するように出している訳ではないし、審判も黙認しているのだから外野がうるさいなどと言うのはお門違いです。

 

このLタイプに多いのは、「全てのポイントを取りに行きたい」選手だと考えています。今回挙げた二人は前陣の速い打点で両ハンドを振り回すタイプで、プレーからはガツガツとした印象を受けると思います。年齢が若いことも一因かもしれませんが、大きな声でプレー全体に勢いを付けて押し切るような展開が得意と思われます。その他国内のメジャーどころで言うと関東学生リーグ(関西は観たことが無いので分かりません)やインターハイなど、学生の全国大会ではとにかく大声を出すことが良しとされているような風潮を感じます。

若い選手に多いことからも、こちらのタイプは分析や思考というより、気持ちを高めて勢いで勝ちに近付こうというタイプなのだと思います。

 

Cタイプ

Cタイプには確率で試合展開を考えるタイプが多く、時にその試合態度は淡白すぎるように思えだり、得点しても満足していないかのように見たりします。確率で考えるというのは、「10本の内6~7本得点出来ればいい、残りは失点しても構わない」という思考です。世界で活躍する選手の中でも老練や熟練という言葉が似合うような選手に多いです。

丹羽選手は自分がカウンターしやすい球を相手に打たせてそれを一発で持って行こうという虎視眈々タイプ?で、ハマれば凄まじいカウンターが出るものの時に一見投げやりにも見える打ち方をします。実際には投げやりな気持ちではなく、「難しい球も含めて狙っていけば○○割は得点出来るはずだ」と確率的に考えているはずです。

 

陳衛星選手をある程度ご存じの方にとって、この選出は意外かもしれません。確かに彼は失点時に怒りを表現することで有名です。ここに目が行きがちですが、彼はどんなスーパーラリーで得点しても声を出すこともガッツポーズをすることもありません。試合の勝敗が決するまで喜びを一切表さないのが彼の特徴です。

これは聞きかじった話ですが、彼は自分のミスに大変厳格で、あの怒りのアクションは自分の凡ミスにキレているそうなのです。こういう修行僧タイプですから、ちょっと得点した位で喜んだりしないのも頷けます。

 

声を出したほうがいい人、そうでない人

前節での分析を、中学生たちに当てはめて考えます。

 

声を出したほうがいい人

中学生の内、ドライブ主戦型、異質攻撃型の多くは声をある程度出したほうが良いと思います。具体的に何が良いかと言うと、戦況が上向きやすい。気持ちにエンジンがかかれば身体の動きにキレが出て、ドライブの安定や伸びが出てきます。得点に繋がる攻撃ができた時はもちろん、得点は出来なかったけれど良い感じで打って行けた時や打ちミスしたけれど選球自体は良かった時などには声を出し、気持ちを高めていくのが良いです。こうしていけば、序盤は調子が悪くても徐々に回復していきます。戦型の性質上、自然と声を出したくなるプレーが多くなることもLタイプに適しています。

中学生や”攻撃型”と限らずとも、ほとんどの人は声を出したほうが良いのだと思います。

 

ただし、声の出し過ぎには気を付けないといけません。目的は試合に勝つことで、声を出すことではありません。勝つため、つまり得点を増やすために必要なことは何か考え、「私は声を出して気持ちにエンジンをかけていかないといけないんだ!」との結論を選手本人が得たなら声を出すべきです。

こういうことを置き去りにしてしまうと、声を出すことに体力を持っていかれてしまって最終セットでエネルギーが不足することがあります。あるいは相手を観察したり戦術を考えたりする思考が放棄されてしまう恐れがあります。セット間にベンチでアドバイスできるとは言っても、試合が始まれば選手は孤独です。セット中に状況の変化を認識できないほど声出しに夢中になるのは危険です。

 

 

声を出さない方がいい人

「ほとんどの人は声を出したほうが良い」と述べましたが、稀にそうでない性質の人がいます。例えば1ポイントに一喜一憂せず勝つまで良い緊張を保つんだというタイプ、黙々と進めた方が戦況が良くなるタイプ、集中すると意識の中から「声を出す」行為が排出されるタイプ(声を出すことが集中の妨げになるタイプ)、叫んでる暇があったら相手の表情を見たり得点できたパターンを振り返りたいというタイプなど。

男子より女子、”攻撃型”よりカット主戦型に、声を出さないタイプは多いように思います。 カット型はカットからチャンスを作って攻撃した時が一番の声出しポイントだなと思っていますが、ドライブ主戦型のようにドライブで詰めて詰めてノータッチ…という展開の爽快感とは違う味わいなので、大声を出す選手はそもそも少なくなると思います。球速ではなく目に見えづらい変化で得点していくため、”相手のミスで得点した感覚”が払拭できないことや、じわじわと追い詰めていく、あるいは盛り返していくという戦型の性質も関係しているかもしれません。

私が外部コーチしている学校では女子部員が2,3年生を合わせて十数名おりますが、調子がいい時に声を出さない・ガッツポーズもしないのはAさんだけと思います。三年生のもう一人のカット型Bさんは反対に声を出し過ぎる傾向があり、大会や練習試合では夕方になると大抵声が嗄れています。うーん、これはやりすぎ!Bさんには、疲れない範囲でいいんだよという話もしましたが、試合を観る限り彼女はいいプレーをすると自然と大きな声が出るタイプのようです。

 

中学校の部活動ではとにかく大きな声を出しなさいと言う指導が往々にして行われがちです。しかし目的を置き去りにして声を出させるのは間違っています。声を出さない生徒がいても頭ごなしに否定するのではなく、「なぜこの生徒は声を出さないのか」を考えた上で本人の話を聞くべきです。そうすれば、その方が生徒にとって良い理由が見つかるかもしれません。

 

(おわり)