中学校で卓球を始める女子生徒が最初に選ぶべきラケットを考えます。ただし、戦型がシェークのドライブ主戦型/異質攻撃型(=バック表やバック粒高)と決定した後に選ぶものです。
この記事では具体的なラケット名を挙げます。
ラケットの選び方については下記の記事をご覧ください。
初めてのラケットの選び方 ~中学女子編~ - 卓球と初心者指導(仮)
目次
バタフライ以外は定価を載せております。web上の卓球用品専門店であればそこから3割引の価格で買うことができます。
各メーカー共に、私が自分の教え子に勧めるとしたら…という想定で順位を付けて並べております。その後に挙げてある順位のついていないものは、候補に挙げる基準を満たすものの使用者をあまり聞かない(≒実績が無い or 他の売れ筋を抑えるほどの図抜けた性能が無い)ものです。
実際には、他の人が使っていない用具は少し違う球を出せたり癖のある卓球をカバーしてくれたりするメリットがありますので、一概に劣るとは言えません。ただ、卓球にどっぷり漬かっていない指導者の方であれば売れ筋のものを勧めるのが良いと思います。その方が安心と言いましょうか、間違いがないからです。
5枚合板
Butterfly 2本
近年高級路線をひた走っており、特殊素材ラケットが多いこともあって中学女子には不向きになっています。
反発特性は数値が大きいほど弾み、11.9~11がミッドファースト、10.9~9.0がミッド、8.9~8.0がミッドスローといったところでしょう。
振動特性は数値が大きいほど手に響きにくいということです。
①ハッドロウVK 82g
弾みミッド~ミッドファースト 打球感ミドル
web専門店価格で9000円弱
オールラウンドプレーヤーにお勧めする5枚合板ラケットです。木材のラケットの伝統ともいえるバランスの良い合板構成で、安定したドライブを打ちやすいのが特長です。
Vは5枚合板の5、Kはコルベルのような扱いやすさを表すとのこと。
ブレード構成はコルベルスピードと同じそうです。私の知人に東京選手権本戦に出場するレベルのバック表の選手が二人いまして、二人ともコルベルスピードを使っていました。となるとバック表の選手に良い、弾きが良いのかな…?とは言え当時はセルボールでしたから、プラになってどうかな、といったところ。コルベルスピードの平均重量は90gでしたから、少し軽くなっているようです。
②メイスパフォーマンス 71g
弾みミッド~ミッドファースト 打球感ソフト
web専門店価格で5000円弱
軽くて使いやすく、威力も十分。メイス選手のパフォーマンスを思わせるような独創的かつ攻撃的なオールラウンドプレーに最適です。
製造時期による木材の品質の違いか、はたまた仕様を変更しているのか、メーカーの公表する平均重量は年や時期によって大きく変わってきています。
両面に裏ソフト、特に重いラバーを貼るなら良しですが、バック表や粒高には71gでは軽くなりすぎるのでナシ。
[所感]
メイスパフォーマンスの重さは、中学三年まで使うことを考えると軽すぎる恐れアリ。80g強というハッドロウVKの重さは、重量だけ見れば安心です。ラバーを選べる範囲が広がります。
用具の総重量が軽いと、相手の打球に押されたり自分の球威が頭打ちになったりします。選手本人に無理が無い範囲で、最大の重さが理想です。重すぎても軽すぎてもいけません。
Nittaku 5本
木材合板の選択肢が多く、良心的な価格設定です。性能的に、中学女子が使いやすいラケットが多数あります。
①佳純ベーシック 85g
5枚合板をベースとしたコントロール性能の高いラケットに仕上げました。
レベルアップを目指す選手、バランスのとれた攻守を重視する選手にオススメです。
バタフライのロングセラーラケット、コルベルと合板構成がほぼ同じで、ブレードがやや小さめに設計されています。コルベルは球持ちが良く回転がかけやすい上に打球感が素晴らしい、ということで売れ続けているようです。本家コルベルは平均重量が90gを超えるので女子には使用者があまり見られませんが、この佳純ベーシックは85gに抑えられているので女子中学生に使用者を多く見かけます。”佳純”のネームバリューも効いているでしょうが、中学始めの女子中学生に使ってほしい用具ですし、ニッタクさんの売り方が正解だと思います。
②ラティカ 88g
5枚合板をベースにしたコントロール性能の高いラケット。
レベルアップを目指す選手やバランスのとれた攻守を目指す選手にオススメです。
「佳純ベーシック」をベースに、ブレードを少し大きくすることで、ブロックと攻撃の安定性を強化。
上記の説明の通り、佳純ベーシックの大型化版。つまりコルベルの小型化版。88gであれば、両面のラバーが合わせて90gになっても総重量は180gを下回りますので、私が日頃から指導できる生徒であればニッタクの中ではコレです。身体が小さい場合、最初は後述の佳純ベーシックを使ってもらって成長経過を見てラティカへの乗り換えを検討します。
メーカーの説明にもあるように、ブレードが大きい方が相手のボールに押されづらいためブロックしやすく、重くなることで攻撃も安定します。身体への負担が過剰にならないなら、こちら。
●フォレスティア 78g
表面に木曽桧を使用した日本製の5枚合板。
軽めで扱いやすさを重視しました。
ステップアップに適しているラケットとして、台上・ツッツキ・ドライブなど、様々な技術を覚える時期にピッタリな一本です。
単板の日本式ペンに用いられることが多いことから想像するに、ヒノキは軽くて弾むのでしょうね。打球感もあの独特な、サラサラとした感じと思われます。エラが少し細目なので重心が先端よりになっています。グリップに緑色が配されており、緑好きな子には良さそうです。
●エボーシャル5 80g
テンポの速い連続攻撃!弾みの良いスマッシュ攻撃!
重量抑えめで振り切りやすく、軽快な打球感を楽しむ5枚合板。
ニッタクのカタログによれば、攻撃用ラケットの中ではビギナー向けとのこと。
打球感ハード(≒弾きが良い)ということで、合わせるなら柔らか球持ちラバー。ヴェガヨーロッパかヴェガエリートかな…。
ウッドエッジガードが施されており、台にぶつけた時に衝撃が緩和されるのと、メーカー曰くスイートスポットが広がる効果があるそうです。
●ラティカライト 78g
5枚合板をベースとしたコントロール性能の高いラケット。
レベルアップを目指す選手、バランスのとれた攻守を重視する選手にオススメです。オールマイティで、コンパクトなブレードやグリップはキッズ・レディースにオススメです。
佳純ベーシックをさらに小型化したもの。コルベルの超小型化版。ブレードが小さいことによりラバーを貼る面積が小さくなるので、同程度の重量のラケットと比べても総重量は軽くなります。軽すぎるので、女子中学生の教え子には勧めないかな…。小学生の女の子が卓球を始める際には大変良いと思います。
●ジェンティ 80g
スピード性能を重視した高弾性+軽量コンパクトブレード。
ミッドでハードというラケットは、ニッタクでは他にあまりないようです。
不思議な安さを誇りますが性能には関係ないので、スピード・打球感とグリップデザインが気に入ればお買い得でしょう。重さは標準的。ただしラティカライト同様ブレードが小さく、総重量が軽くなります。ブレードが小さいことによりやりにくい技術も存在しますので、やはりこれも小学生で始める人向けかな…。
ニッタクラケット性能相対表
[TSP 2本
近年スワットシリーズでラケット市場を席巻しました。ラケット・ラバーともに比較的安価なメーカーです。 表ソフトラバーの代名詞スペクトル、粒高と言えばのカールシリーズでおなじみ。
TSPの弾みの基準はファースト+、ファースト、ミッド、スローなので、それぞれニッタクのファースト、ミッドファースト、ミッド、ミッドスローに相当すると思われます。
①ウォルナットウッド 80g
弾みミッドファースト、¥6800+税
手に伝わる打球感の心地良さと適度な弾みで、非常にコントロールがしやすく安心して使える。見た目もきれいで手に取ってみたい1本。
実際に購入して使ってみました。ファスタークG1/C1を貼ったところ弾きが強すぎてコントロールできず、ラクザ7を合わせたところラバーで球を持ちラケットで弾くちょうど良いバランスになりました。
メーカーカタログによればスワット(7枚合板)と近い性能を持つラケットとされていますが、実際にはもっと打球感が硬く球離れが早いです。上板が胡桃だからだと思われます。とても打球感ミッドとは思えませんでした。
5枚合板の中では全メーカーを合わせても、かなり弾きが強い部類に入ると思います。中学始めの女子が使う際には柔らかいラバーあるいは球持ちの良いラバーと合わせると良いです。これを中学始めのお子さんが使うなら、まずは高弾性ラバー、マークVあたりがよろしいでしょう。ヴェガエリートやヨーロッパのようなテンション系を貼ると、初心者には弾み過ぎる恐れがあります。レベルアップしたらラクザ7ソフトへ乗り換えるのが良いでしょう。
ウォルナットウッド+マークVを使うなら、スワット+ヴェガエリートでもいいと思います。スワットの方が球持ちが良く、ウォルナットウッドの方が弾きが良いです。
グリップに品があり、ピンクが好きな私は個人的に気に入っています。スワットはグリップが太めでこちらの方が細いので、スワットが太いなぁと思ったらこちらもアリ。
上板の表面が剥がれやすいので、購入された場合はラバーを貼る前にラケットコートを塗ることを強くオススメします。
②スワット5PW 80g
弾みミッドスロー~ミッド
¥5600+税
自分の意思でボールをコントロールするオールラウドなプレーに最適。
グリップを少し細めにすることにより、レディースやジュニア選手もしっかり握ることができます。
かなり弾みが抑えられています。これにスレイバーELを貼ったものを触らせてもらいましたが、とてもプラスチックではやっていけないと感じました。このラケットを使うなら最初からテンション系かそれに準ずるラバーが良いでしょう。これを使うなら7枚合板のスワットでいいよなぁと思います。そちらの方がなぜか価格も安いですし…。
Yasaka 1本
ヤサカと言えば、高弾性の王様マークV。近年ではラクザシリーズも人気を博しています。ラケットデザインは男性好みの渋いものが多いです。
①馬琳エキストラオフェンシブ 85g
弾みミッド 打球感ミドル
¥9000+税
ややハードな5枚の北欧材を使用し、攻守のバランスに優れているのが最大の特徴です。馬琳の強烈なパワー攻撃、細かい技術をフルサポート。
2008年にこれの中国式バージョンが世界を制しました。
Yasakaカタログの打球感はソフト・ややハード・ハードの三段階に分けられているので、「ややハード」は他社で言うミドルに当たると思われます。
個人的にはグリップデザインが渋くて好きですが、女子中学生が気に入るかは分かりません…。上板が硬いので、女子で合わせるなら柔らかいラバー/球持ちの良いラバー。
STIGA 1本
①オールラウンドエボリューション 85g±
ミッド、ソフト
裏裏で、前陣ラリーをするようなタイプはコレ。選択肢として安全。ラバーで言うマークVのような存在か。
7枚合板
Butterfly 1本
①ハッドロウSK 83g
ミッド ミドル
web専門店価格で9000円弱
多彩な技術を可能にする7枚合板ラケット。
回転量の多いドライブや安定感のあるプレーを求める選手にお勧めで、前陣から中陣での攻守に威力を発揮します。
SKタクティスと同じ合板構成とのこと。SKタクティスはあの名品SK7の改良版で、形状を変えることにより弾みを落とさず軽量化とスイートスポットの拡大を実現したものです。
一応載せましたが、初めてのラケットとしてコレを使うなら後述のスワットで良いと思います。
Nittaku 3本
●セプティアー 85g
台上・角度打ち・ドライブと様々なバリエーションの打法をマスターする段階で使いたい一本。7枚合板の威力を備えながら平均的な重量で、扱いやすく中陣からの連打も可能にします。攻守のバランスを重視する選手にオススメです。
ヒノキだけの7枚合板と言うことで、他の7枚合板にはない打球感と思われます。板が厚めなのが気になるところではあります。
●エボーシャル5 85g
連続したドライブ攻撃!回転をかけやすい、しなり。
安定した弾みとやわらかい打球感で、ラリーを楽しむ7枚合板。
謳い文句を見ると男子向けのように思えますが、重量と弾みが条件を満たすので上げておきます。
●ルデアック 85g
相手の強打に打ち負けない、威力がある7枚合板。
ラバー自体の良さを引き出す、心強いラケットです。
後述のアーレスト7(Yasaka)と似ています。
ルデアックの強みはハードタイプのルデアックパワー、特殊素材入りのルデアックフリートと兄弟ラケットが存在することでしょう。男子中学生であれば、高校に入る辺りでラケットを変えたくなった時に迷わずに済むかもしれません。
女子であれば重量の関係上それらに乗り換えることは考えにくいので、価格の低いアーレスト7の方が良いでしょう。
TSP 1本
①スワット 85g
ミッドファースト ミドル~ハード
¥5200+税
木材の打球感を最大限に生かし、広いスイートスポットが特徴。操作性が高く、幅広いスタイルにマッチする高性能な7枚合板。
他の追随を許さない、圧倒的なコストパフォーマンス。初心者でも扱いやすい穏やかな側面を持ちながら全日本社会人で優勝するなど、まさに幅広いスタイル・レベルにマッチします。この性能のラケットを3割引きなら4000円前後で購入できるというのは驚きです。
7枚合板としては比較的軽量であることに加えて7枚合板にしては弾みが大人しいため、初心者でも扱いやすいと言えます。ライズやマークV,ヴェガエリート/ヨーロッパあたりを合わせれば初心者でも十分に扱えます。ただし重量指定をしないととんでもないことになります。私が重量指定せずに購入したところ91gを超える個体を引き当ててしまい、球を持ちすぎて扱いづらさばかりが際立ちました。回転をかけるとボールがずぅーっとラバー表面にいる感じがしました。
下記のwebサイトの月ごとの集計を見ると、スワットの売り上げは2016年の全月で1位です。
Yasaka 1本
①アーレスト7 85g
ミッド ミドル
¥4600+税
反発力と硬さをやや抑え、7枚合板ながらも使いやすさにもこだわったラケットです。攻撃重視のスタイルを目指す初級者からバランス重視の攻撃プレイヤーまで幅広く対応します。
これは…スワットへの対抗馬なのでしょうか…?スワットのお値段を下げて弾みをほんの少し抑えたように思われます。ただし上板の加工方法が違うので、打球感には差があるはずです。7枚にしては軽いのが嬉しいです。
(おわり)