卓球と初心者指導(仮)

中学校の卓球部における指導について、主に考えていきます。

全日本カデット予選

8月下旬に二日間に渡り行われました。一日目はダブルスと一年生のシングルス、二日目は二年生のシングルス。よって二年生は二日とも参加し、一年生は一日目のみの参加でした。この二日間で記憶に残ったことを記録します。

 

魔の数回戦

参加人数が男女合わせて千名に迫るため、ダブルスは五回戦、シングルスは四回戦になるまでベンチ入り不可。ダブルスは初戦から5セットマッチであり、パートナーと相談もできるのでまだマシ。恐ろしいのがシングルスで、三回戦まで3セットマッチであることに加え、自分たちの試合があるコートの後ろに座って待機する方式で進む。ただでさえ一人で戦わねばならないのに、すぐ後ろに人がたくさんいることにより間を取るのも中学生では難しく、心の揺らぎをコントロールすることが非常に困難。そこに3セットマッチであることが追い打ちをかける。この状況で、自分より総合力が劣る相手に第1セットを取られた時の恐怖は想像を絶する。そんな中勝ち上がっていった選手たちは立派以外の何物でもない。

 

 

一年生のシングルス

経験者4名の内3名が県予選進出。

経験者の内の1名については何度かベンチで試合を観たことがあり、どういうプレーで得点するか予想がついていた。他の3名も4回戦以上まで勝ち上がるだろうと予想しており全員の試合に1回はベンチ入りしたいと思っていたが、二年生も出場するダブルスの試合がサブアリーナで続いておりそちらのベンチに入っていたため1名のベンチに入ることはできなかったのが心残り。ベンチに”入ってあげたい”とかそういう偉そうな考えからではなく、今後彼らがどういうプレースタイルを目指すべきか、何を磨いてどこに修正をかけるかを考えるために間近で試合内容を見たかったのと、ベンチ入りすれば適切なアングルから試合を撮影することができるので。

 

ビギナー5名の内1名だけ1回戦で敗退してしまった。彼女は未経験とは思えないほどスイングがキレイで力加減も適切、身体の動かし方を見てももその辺の人より運動能力が優れているのを感じる。であるから1回戦は勝っていると無意識に考えていたようで、観客席からチームメイトの試合を眺めていた彼女に「勝った?」と声をかけてしまった。何とも言えない表情で「1回戦で負けました」と応じた彼女を見て、「しまった」と。聞くと相手はそれほど上手くなかったようで(未経験者がほとんどなのだから当たり前だが)、表情二は出ていなかったがかなりショックだったようだ。「君はこれから、どんどん伸びるよ」と言ってお喋りを終えたが、うーむ…。他のビギナーが全員1回は勝っていたことも、彼女にはつらいところだったのかもしれない。

最初にかけるべき言葉は「どうだった?」であった。他の数名は1回戦を観客席から観られたが彼女の試合開始は遅く、ダブルスの会場へ私が移動した後だったようで見ていなかったというのもある。だがこんなものは言い訳に過ぎず、同じような失敗を今後しないようにしたい。

 

シェーク表粒の選手、とんでもない海賊船に乗せられてしまったなと心配していたが表の扱いに段々と慣れてきており、1回戦では1-1となったものの2-1にして勝利。シェーク裏裏、せめてフォアは裏にした方がよろしいかなぁと思っていたが、彼女も納得しているし、やっていけそうである。彼女の試合は最初から最後まで観ることができ、後で「観てたよ^^b」と声をかけることができた。彼女とは段々やり取りする機会が増えてきていて、少しずつ私がどういう人間か分かってきてくれているかな…。

カット型の選手が謎の能力者で、完全なる中学始めながら5回戦まで進んだようである。彼女のプレーも観たかったけれど、やはりダブルスの試合にかかりきりでほとんど観ることができなかった。彼女とは練習中の接触がすでに増えてきているので、そういうところで信頼関係を築いていけるよう努めたい。

他のビギナーについても1回は勝てたので良かった良かったと。ある程度引き締まった空気の中で打っていることが功を奏しているのだと思う。三年生が県総体に進出したこにより他校と比べて一年生の打球回数が少ないことを心配していたが、今のところは杞憂で済んでいるかもしれない。(1回戦負けで悔しい思いをした選手がいることには留意。)

 

 

ダブルス

準決勝まではサブアリーナで。4回戦までベンチにアドバイザーは入れなかったもののフェンスで仕切られた通路が設けられているため、メインアリーナでのアドバイザー禁止と違って応援する者がコートのすぐそばまで行くことができる。

あるダブルスの3回戦、11-9で第1セットを取ったものの第2,3セットを落とす。失点の主な原因はまだ二人の緊張が続いていることによる動きの硬さ、相手のミスが少ないことによりリスクの高い送球をしすぎていることだった。それまで黙って観ていたが、こんなところで負けてもらうわけにいかないと思い、選手がセット間でフェンス際に戻ってきたときに「これから独り言を呟くからね」と言いブツブツと呟く。「簡単なボールでいいんだよな。ゆっくりでいい、簡単なボールでいいから、まずは目の前に来たボールを一つづつ返していくこと。試合全体の流れをゆっくりとやること。これは絶対にいける!と思えたボールだけ、思い切って行くこと。そうすればきっと上手くいくんだな。」と。そこから打ち急いだりリスクの高い打球が減ってラリーが延び、その中で生まれたチャンスボールを活かすことができ3-2で勝利した。試合後二人は「コーチの独り言のおかげです~」などと言っていたがそうじゃない。彼らの持っている力が発揮されただけである。

ここでの私のやり方は決して良いとは言えないかもしれないが、アドバイザー禁止なのは進行の都合を考えての事であり、選手の知ったことではない。会場の利用時間は確かに限られているが、その中で選手ファーストを実行するのは認めてもらいたいものだ。今回の行動に関しても、給水時間を利用すれば遅延は起こらない。「他の選手はアドバイスを貰っていないのに不公平だ」と言われれば、そんな不公平性はアドバイス可の試合でも生じると反論できる。アドバイザーが入らない試合もある一方で、試合をひっくり返せるアドバイスをできる人間がベンチ入りする試合もある。うーん、自分に都合のいい言い訳を並べ立てている…。

 

何にしても、選手たちが私の”マジック”にかかった経験をすることは信頼関係の醸成に繋がる。信頼関係が築ければ、「この人の言うことを信じてみよう」と思える状態で練習や試合に臨むことができる。そうすると練習の効率―技術向上のスピード、発見や得られる満足感の多さ―は高まり、試合では精神的な揺らぎが生じてもリカバリーが効きやすくなって結果に表れる。そういう風にやっていく中で「僕の言っていることが間違っていたら自分でチェンジするんだよ」とか、「君の力を上手く出せればこうなるんだぜ」と伝え、選手の自立や自己肯定感の高まりを促す。そうすれば選手は自分が主役であることを認識し、より成長速度が上がる。

 

 

二年生のシングルス

シェーク裏裏のAさん

一年生の卓球お化け一人を除けば絶対的なエースのAさん。一日目が終わった時点で「明日のシングルス、すごく緊張します~(+_+)」と言っており、二日目を迎えた。彼女は角シードであり二回戦からで、トーナメント表での位置もあって初戦の開始が非常に遅かった。さらにシングルスは先述の通り3回戦までコート進行、その間フロアで待機である。つまり一人でいろいろと考える時間が長く、シードであることもプレッシャーになっていたようだ。当たる相手が技術的に劣ることが分かっており、彼女の人となりを考えると、「負けられない」とか「負けたらどうしよう」という思いが頭を駆け巡っていただろうと思われる。

初戦が勝負だなと思っていたが予想は的中、突き放されることはなかったものの第1セットを落とす。いつものようにちょっとしたミスが彼女の精神状態を追い詰め、「これは…大丈夫かしら…」と思っていたがそこから2セットを奪い勝利。勝ったものの表情は暗く、続く3回戦も心配だなぁと思っていたがそれ以降は身体の動きが良くなり始め、2回戦のような危うさはなくなっていった。3回戦を終えて昼食休憩の時間が設けられ、その後4回戦がスタート。全員が勝ち上がっており同時に3,4名がコールされたため、私はカット型のCさんのベンチに入ることに。もちろんAさんの試合も同等に大事ではあったが、2,3回戦を経て心が復活してきていたので彼女を信じてCさんのベンチに。6回戦を勝っての準々決勝からベンチ入り。準々決勝を勝ち、ベスト4の4人でリーグ戦をして順位決定、Aさんは2位。計4試合を共に戦うことができた。

準々決勝以降はずっとフロアにおり、次の試合のコールを待ちながら用具の事、戦術の事、練習の事などいろいろとやり取りすることができた。

 

シェーク裏表のBさん

 彼女のシングルスには一度もベンチ入りすることができなかった。県カデットへの切符は手にしているので、そちらでベンチ入りすることができればいいな…。

 

バック粒カット型のCさん

 2,3回戦とツッツキの変化でスッと勝利し、5回戦で他校のカット型に負けたものの敗者復活戦でクラブ勢の攻撃型に勝ち県カデットへの進出を決めた。5回戦の相手は8月中に一度戦っていた相手で、その時よりも(いろんなことが)出来なかったと泣いていた。そこからあまり時間を置かず敗者復活戦がコールされたので心配していたが、フォアミドルに深いバックツッツキを送る戦略が功を奏し、打ちミスを誘って勝利した。ある程度打てる攻撃型には勝てるところまで、ツッツキやカットの技術レベルは上がってきている。今後の課題は対カット型や、攻撃型が全てツッツキしてきたときにどう突破していくか。粒でのプッシュからフォアの攻撃に結び付けたいし、甘いツッツキに対してドライブで急襲したいので、そのあたりの練習を増やしていきたい。また、先代が接触する時間が無かったロビングという技術にもすでに着手している。サービスも、いつの間にかバックハンドサービスは滑らかになって回転量が増え、フォアハンドサービスも下と上を使い分けられるようになっている。これは先代に並ぶか、あるいは超えるか。大変楽しみである。

 

前陣異質型のDさん

彼女だけが県大会に進出できなかったが、試合内容は大変良かったのではないかと思う。コート進行の試合ではミスをした時に観客席で私が頷いているのをチラッと見ながら彼女も自分を納得させるように頷いていたのが印象的。後で確認するとやはり私に気付いていたようで、「安心しました~(*´∀`*)」と言ってくれた。接戦を制するサポートができたなら嬉しい。

ベンチ入りは出来なかったものの、4回戦では先に2セットを取られてからひっくり返したようで、大きな自信になったのではなかろうか。県に行けないということは、5回戦で負けて敗者復活でもやられてしまったのかな。

 

前陣異質型のEさん

4回戦進出を決めて観客席に上がってきたとき、「全然ダメだ~」と言っていたのが印象的。彼女は比較的自身のプレーに対し辛口で、勝っていても納得しきらないことが多い。そういうところはAさんと似ているが、Aさんと違ってそれで暗くなっていくことはない。あ~ダメだ~と言いながら、調子をそれほど落とすことなく続けることができる。

5回戦では第1シード(=今回の優勝者)に当たり吹っ飛ばされていたが、この時期にああいうボールを経験しておいて良かったのではないか。案外得点出来るなという思いと、あぁこんなボールまで一発で持って行けるのかという驚きがあったかな。

 

 

全て試合を消化した後で、ベンチ入りしていたAさんと一緒に観客席に上がりお喋り。シューズに穴が開いていてそろそろ替えないといけないこと、気分を変えて次は別のシューズにしたいこと、今のシューズを選んだ時には派手なのはちょっと…と思ったから今は白基調だけれど最近は派手なものが増えていてそういうのもいいなと思っていること、足が小さくてシューズを選ぶのが大変なこと、普段用の靴も時には子供用なこと、お家の人から「長く使うものだから高くてもいいから、きちんと考えて選びなさい」と言われていることなど聞かせてもらった。

どうなのかな、距離感を間違えているのかな…。でも彼女が望んでいるなら、まぁ…。

 

(おわり)