卓球と技術のソノサキ

中学卓球部における指導と自分の成長記録の二つがメインです。

文武両道

私が懇意にしているレッスンプロ(以下、コーチと呼びます)に師事している、ある中学生の女の子のお話です。私はカット型の練習相手として親御さんたちに呼ばれ、レッスンに紛れ込んでいます。(カットをするお駄賃代わり?に、時々私も彼らと同じ攻撃の練習をさせてもらったり、コーチから直接アドバイスを貰ったりしています。)

 

ロゼナを使っているので、Rさんとします。

妹と同時に小学校低学年で卓球を始め、現在中学1年生。3年生も含めた夏の県大会で何回か勝てるレベルで、小学生の頃に何らかのカテゴリーで全国規模の大会に出場経験があります。

 

そんなRさんは現在妹さんや他の少数の女子と一緒にレッスンを受けており、その頻度は週2回です。妹さんは週3回ですが、Rさんは週3回塾に通っていて1回が卓球のレッスンと重なっているため妹より1回少なくなっています。

先日Rさんの中学校の練習も拝見しましたが、周りは先輩を含めて皆中学スタート、先生は卓球未経験者で(誰が悪いということではなく、致し方ないことです)、到底彼女の練習が出来る環境ではありませんでした。卓球を始めた当初から大人も参加するクラブチームに加入していた彼女は、一般的な中学校の部活では卓球をしたことにならないレベルまで来てしまっていました。

そんな様子を見て私は、塾の日時をずらして週3でレッスンに通えばいいのにな…と思っていました。

 

そんな折、あるニュースが入ってきました。「塾を週4にするので、定期的なレッスンは来週で最後にする」とRさんのお母さんからコーチへ通達があったというのです。先週コーチと二人で食事に行った際にRさんの勉強と卓球のバランスについて相談し、私からお母さんにアプローチしてみようという結論が出た矢先だったので驚きました。

何故ここで私が首を突っ込むかと言いますと、私はお勉強では全国大会でもそこそこ上位の結果を出した経験がありまして(ハイ、まーた自慢が始まりましたよ!)、中学・高校の勉強のノウハウがあり、Rさんのお母さんもそのことを知っていて一目置いてくれているらしいからです。らしいと表現したのはお母さんの私への言葉と、コーチがそう言ってくれたからです。

コーチとしては、お母さんはRさんをどこに向かわせたいのかが疑問だそうで、これだけ卓球が出来るのに、勉強で県内トップの進学校を目指すのか何なのか…と半ば呆れ気味でした。

 

本人をスキップして知った風な顔でお母さんに接触するのはおかしいということで、まずはRさんの意思を確認することにしました。

つい先日のレッスンにてRさんとお話したところ、出来るなら毎日コーチの卓球場で卓球をしたいこと、塾に行くこと自体は別段嫌ではないこと、高校でも卓球は続けたいこと、この高校に行きたい!という明確な意思はまだないことなどが確認できました。

 

 

以下私の考えです。ここから掻い摘んでRさんに伝えました。

 

Rさんの自宅のある市内に、専用の練習場を持ち偏差値が高め(65前後)の公立高校があります。県内から卓球と勉強両方のレベルが一定水準以上の生徒たちが集まるため、練習環境は良く真剣に練習に取り組む人が多いと思われます。仮にここを目指すとすると最低合格点が370前後なので、毎回の定期テストで350~400くらいを保てていれば3年生の夏以降の勉強量増加も加味して射程圏内に入ります。(本番で400取れれば確実。)本人曰く、普段のテストで350は超えているとのことでした。

女子でこの点数を取れるということは、ある程度授業を聴けていますし課題も最低限やっていると思われます。(男子は課題を適当にやりがち。)つまり勉強に対する耐性と勉強の習慣があるということです。そういう人は週4回も、それも講義式の塾に通う必要はありません。

講義式の塾を必要とするのは、学校の授業ではあくびが出てしまう超高偏差値層か、何らかの事情で学校の授業をまともに受けられていない低偏差値層です。彼らは学校では教われないハイレベルな内容に触れたり、あるいは学校の授業の代わりとして講義式塾を利用することが出来ます。

Rさんはそのどちらにも該当しないため、学校の授業と同じような内容を塾で聴くことになります。もちろん2度聴いた方が記憶には残るので全くの無駄とは思いませんが、時間と料金の割にリターンが小さく、またそれらは自分で勉強をすることで代替できます。こういう層が塾に行くのであれば、自分で勉強して分からなかったところだけを質問できる個別指導式を選択すべきです。

 

部活の他の部員には悪いけれど土日の部活参加の優先度は落として、塾とレッスンの時間が被らないように調整することも検討した方が良いと思います。部活でのRさん1年生たちと仲良くやっていて笑顔も見られますが、それは卓球が出来る喜びから来るものではありません。Rさんにとってそういう喜びを得られるのは、現在レッスンの時間だけなのです。

塾に行く回数を増やせば点数は上がる思われがちですが、大して勉強していない人間が通えば0が+に転じるので、点数が上がるのは当たり前です。しかしながらこの伸びには上限があり、そこから先は自分がどれだけやるかです。

Rさんからレッスンの時間を奪うことは、点数を上げるどころかかえって学力の伸びを阻害する可能性すらあります。卓球をしたいというフラストレーションを抱えた状態で勉強することになれば、その効率は今よりも落ちるからです。卓球をやりこめる瞬間がないために勉強に集中し切ることができず、漫然と勉強することになるのです。

 

私からすれば、個別指導式の塾に週2、卓球のレッスンに週3がRさんにとってより良い選択だと思います。現在と同じ週3で通うとしても、例えば土日の学校練習は午前だったら参加し、午後だったら不参加として塾とレッスンを両立できるよう時間を調整することも検討すべきです。こういう部活参加の形は、一般的にも決しておかしくないと思います。 

 

勉強を教えられる人間は世の中にゴマンといます。それは義務教育により国民全員が勉強に触れ、ある程度の能力があれば自分一人でノウハウを築き上げることができるからです。しかし卓球はそうではありません。競技として卓球を経験する人達は”高学歴”と呼ばれる人達に比べて圧倒的に少なく、技術のその先を教えられるステージに達するのはその中でもほんの一部です。学校に行けば先生は何人もいますし、塾もある、私でも教えてあげることはできます。代わりは効くのです。

一方でRさんの周辺にいる”卓球の先生”はコーチ一人しかいません。そういう人に教わらないと次のステージに行けないところまで、彼女の卓球は育っています。こちらは代わりは効かないのです。

 

人様のお子さんですけれど、私はRさんに、卓球だけできる人間よりは卓球も勉強もできる人間になってほしいと思っています。ですから塾に行くこと自体は継続しても良いと思います。(個人的には、自分で勉強できる段階まで行けば、偏差値65の高校に入るには塾は不要と思います。結局多くの親御さんが、安心を買っているのでしょうね。)しかしながら、お母さんの選択はあまりに偏っています。

 

この春、Rさんの妹は親元を離れてある強豪校へ入学します。妹は卓球で高校の先までまで進路が確保されるでしょう。どうもお母さんはRさんを妹と比べがちで、なおかつRさんにやたらと厳しいように見受けられます。「妹は卓球、Rはそういうレベルじゃないんだから、勉強!」といった考えなのだと推測しています。でも、妹さんがあまりに飛びぬけていただけで、Rさんの卓球も褒められて然るべきレベルです。

 

これはRさんには言いませんでしたけれど、Rさんがいるのといないのとでは卓球場の空気は変わります。大人のいるクラブチームにいたことで、集中して練習する雰囲気を知っており、それを纏っています。Rさんと妹さんの二人が抜ければ一緒に練習しているお子さんたちの成長速度は落ちるでしょう。それに、Rさんは左利き。生まれながらの天才です。他のメンバーは皆右利きなので、そういう観点からもRさんにはいてもらわなければ困ります。

コーチはドライな思考の持ち主で、誰がいなくなろうが寂しいとか勿体ないとかそういうのはあまり感じないそうです。でも私は、Rさんが離脱したら寂しいなと思います。(私自身のために左利きのボールを身近に確保しておきたいという、下心もあります。)

他人のために卓球をするわけではないけれど、周りもRさんを必要としていますよ…というのも、お母さんに伝えるべきポイントと思います。

 

本人の意思は確認し、我々二人の間では塾週2or3・レッスン週3で行こうという結論が出ました。後はお母さんとお話するだけです。あとはご家庭での判断ですから、私が出来るのはそこまでです。今週末のレッスンでお母さんとお会いするでしょう。その際にお話してみようと思っています。

 

 

(つづく?)