講習会の価値

先日、中学校にてあるメーカーさんの講習会がありました。私も呼ばれてその場に居合わせましたので、今回はその辺りのいろいろを。


講師の方は卓球強豪の大学OBで、当然のように全日本選手権への出場経験があります。メーカーに入社して3年とのことでプレースタイルは若々しいです。

下回転に対するフォアドライブ・バックドライブ、 上回転に対するブロックの講習がありました。
まずは生徒たちを1台の周りに集め、お手本を見せながらいくつかのポイントを順に解説していきます。その後で各自台について実践するのですが、なかなかすぐにはできません。
今日のメンバーの大半は中学スタートで、動きをイメージすることから難しい段階です。経験者であっても中学生、自分だけで工夫し正解に辿り着くのは困難です。
卓球歴が長く、(実際にできなくても)説明を理解できたり動きを観察してイメージを取り込める人ならば、こういう形式の講習で良いと思います。私は遠巻きに聞きながら観察をし、普段教わっている内容と照らし合わせて納得をしておりました。


子供の頃から良い環境で卓球を教わって体得した人が自身の技術論や感覚を言語化しても、それは初級者には通りづらいものになります。初級者にとって必要なのは、個人に合わせたテコ入れと、「何を意識したらそうなるか」というアドバイスです。

例えばフォアドライブ、「(右利きなら)右足にためてから打つ」と一口に行っても、それは「足を肩幅よりやや広く開いて、腕は引かずに左膝の内側を床に近付けてから、それを戻す力で打つ」ということです。
なかなかタメを作れない人には左膝を床に近づけて…というと自然とタメができます。上級者は自然とそれができているので、その部分の言語化を省いてしまいます。
また、人によってはタメはあるけれど当たる前に力んでいるとか、踏み込みが小さいとか、別の不具合が起きていることがあります。講習会では1対多数、しかも初めて会う子供たちで、講師は試合内容を把握できません。対象が初級者や子供である場合、肝心なところをケアすることができないなと感じました。
講師の方が意図している所を汲み取って咀嚼し浸透しやすい形で伝えるのが、私の役割なのでしょう。


確かにドライブやブロックに公式的なものはありますが、戦型・プレースタイル・用具によって、適切なものは変わります。「君は試合でこういう展開になるから、こういうドライブが必要だね。だからこういう練習をしよう。」ここまでやってもらわないと、チェンジは難しいです。学校がどれくらいの金額を支払ったのか、あるいは無償なのか分かりませんが、会社にとって用具の宣伝ができるメリットがある一方で、子供たちにとって実質的なプラスはいかほどか疑問です。

私がフォアドライブを明確に習得できれば、大抵の技術単体のお手本は見せられるし、どうしたらそうなるか伝えることもできます。今の私に今回の講師の方の技術があればなぁといった思いです。


もう一つ残念なのは、講師の方に子供たちが質問できる時間があったにもかかわらずその質問らはシンプルな技術の話ばかりで、技術の先の話がなかったことです。生徒全員が初心者ならば仕方ありませんが、女子部員の1人に全日本カデットへの出場経験がある生徒がおり、戦術的なことを聞く良いチャンスでした。本人にも、格上との対戦で意識していることや大事な試合で競った時にはどうしているかなど聞いてみたらと言ってみましたが、「そういうのよくわからないんです~」と返されてしまいました。相変わらず感覚と高い身体能力頼りだなぁといったところです。
全日本に出られるレベルが来ているのにそういう話を聞けないとなれば、宝の持ち腐れもいいとこだなと。うーん。



何が言いたいのかというと、初級者や中学生の多くにはいわゆる「講習会」ではなく、レベルに合った指導者による個人レッスンの方が圧倒的に効果が高いということと、子供たちには私が教えられるから、講師の方は私に技術と戦術の個人レッスンをしてくれ…ということでした。


(おわり)