卓球と技術のソノサキ

中学卓球部における指導と自分の成長記録の二つがメインです。

ペンの難しさ

中学スタートの新一年生に見せる試合映像に関して、読者様から「ペン表ペン裏が含まれていないのはなぜか」という旨のコメントをいただきました。

 

私の意識から欠落していたのが主な理由ですが、その背景にはペンを勧めたくはないと考えている自分がいるように思います。

そこで今回は、ペンに関する私の考えをまとめます。

 

 

意識の外に出ていた、ペン表

コメント頂いて、ペン表が意識から脱落していたことにハッと気付きました。

これは、今まで女子中学生のペン表を見たことがなかったことが一番の理由と思います。

 

私が現在師事している方はペン表であり、その方のお師匠さん(Aさんとしておきます)もペン表でありますから、ペン表自体は身近な存在です。ともに段持ちでAさんに至っては全国ベスト8入りの経験がありますから、優れた知恵を借りることも可能です。

しかしながら、私がペン表を勧めることはないでしょう。それは彼らからしばしば、表ソフトの難しさ・苦労を聞かされているからです。Aさんは時折私のラケットを使ってドライブやスマッシュのお手本を見せてくださいますが、「あまり長く使うと表ソフトに戻れなくなる。どこでも打てるし振れば入るからな。」と笑います。「俺たちが卓球を始めたころにはまともな裏ソフトが無かった。威力を出すには表ソフトしかなかったんだ。今●●(=私)が使っているようなラバーがその時にあったら、表は使わなかっただろうな…」とも仰っていました。

 

 

ペン裏裏であればシェイクに近い⇒シェイクで良い

両面裏ソフトの中国式ペンであれば、スイングの大枠はシェイクハンドに極めて近いです。サービスや台上の細かな差はあれど、展開は似ています。であればあえてペンを勧める必要はない、というのが私の考えです。

これも私の友人の言葉が少なからず影響しています。彼曰く、「最初からペンだったからペンでやっている。最初からシェイクだったらもう少し強かったと思う。」

裏面打法は、ペンで無理くりシェイクと同じことをしようとして生み出されたものです。このことはシェイクの優位性を物語っています。

 

ペンは、握り方や各指への力の入れ方によって球質が大きく変わってしまいます。シェイクでも当然差異は生まれますが、ペンでの違いはその比ではありません。

ここで一つ、気を遣わなければいけない部分、指導者がケアしないといけない部分がシェイクよりも増えています。指導者のいない環境で育ったペンたちは握り方のガラパゴス化甚だしく、とんでもない境地に辿り着くことしばしばです。先述の友人は大学に入ってからここでかなり苦労したようで、「よほどペンの方が打ちやすくない限り、シェイクで良い」と言います。私もこの考え方に賛成です。

 

男子ならばいざしらず、対象が女子であることで一つ問題が加わります。ペン裏裏は手首にかかる負担が大きいということです。男子であろうと、必ずと言っていいほど腱鞘炎を経験します。

用具を選べば回避できる問題ではあります。しかしながら高校以降卓球を続けようとなった時、重量含めペンであることが足を引っ張ることを恐れています。

 

 

片面ペンは、もはやない

バックハンドを振れないという明らかな弱点を抱えることになる以上、私はこれは勧めません。身体の左側にボールが来れば振ることは可能ですが、正面はショートするしかありません。それはそれで嫌な球質がでますが、それだけでバックが振れないデメリットをカバーできるとは思いません。

強力なペンの指導者がいて、本人に拒絶感が無い場合に限り片面ペンは勧められると考えています。

また、Ryu Seung Minのようなオバケを観て感動し、「あれを目指したい!」と強く思うならそれは応援します。これと同じルートを辿って、私は今こうしてカット型を楽しんでいるからです。

 

 

ペンの難しさをメリットが上回れるか

ペンがシェイクを上回る点と言えば、横回転サービスを出しやすい、台上で先手を取りやすい、ショート・裏面打法で独特の球質が出せるの3点と思います。

ラケットヘッドが簡単に下を向くので、順横は確実に出しやすいです。シェイクでは下が混じりがちです。

台上については、腕がラケットの下側にあるのでストップがしやすく(弾みを殺しやすい)、手首でフリック・流しを分かりにくくすることができるからです。

ショートはナックルに近くて止まる・掛けてもおちるボールになり、裏面打法によるバックハンドは横回転が入って軌道も回転軸もシェイクのそれとは異なるため、ともにやっかいです。

先日Aさんとダブルスを組んで大会に参加したところ、相手の大学生ペアは練習のロング打ちの段階でAさんのボールに対しボトボト落としていました。上手く扱えるようになれば、ペン表は確かにただ打っているだけで得点出来るかもしれません。しかしその分打点を選ぶことは出来ず、力加減もシビアです。よりフットワークを必要とします。

 

最初から本気で競技として取り組む環境であれば、個性によるやりづらさを優先して戦略的にペンを勧めるのも正しいと思います。それで選手が納得するのであれば。

香港のWong Chung Tinのように、パッと握ってペンがやりやすかったからペンを選んで世界トップに至った選手も確かにいます。

 

ここで述べたメリットたちは、技術を一定レベルまで精錬できて始めて表れるものです。それまでは、ペンであるが故の難しさを感じながらやっていくことになります。何も知らない中学スタートの彼らに、その難しさを課すことはしたくない、というのが本心です。

 

 

カット型も同じようなもの

私は子供たちにカット型を勧めたことはありません。習得までが長く、その間苦しみます。カットを習得しても全てツッツキされたら勝てないので、攻撃の練習も必要になります。私のようにカット型に憧れ、カットすることそのものが好きでいられなければ、カット型など辞めたくなるのが自然です。

結果的にカット型の選手を何名か育成することになりましたが、カットが楽しいという声は聞かれませんでした。私に遠慮して言わなかったのでしょうが、カット型であることに辛さを感じていたようです。(最初にもっと裏ソフトでのロング打ちをさせればもっと簡単になるはずですが、先生の素晴らしい発想によって初期段階からツッツキとカットばかり練習させられてしまいました。)

 

ペンとカット型の違う点は、女子に限ればトップ選手にも多いという点です。良いお手本をたくさん見ることができ、その中から好みのものを選ぶことができます。また、私が直接ケアすることができ、確かな勝ちやすさも見えてきました。本人にやってみたいという意思さえあれば、高い満足度を得られるところまで連れていけます。

 

 

折を見て、師匠方にペン表を勧められるかどうかお話を聞いてみたいと思います。

 

 

(おわり)