新1年生の指導について part1 ~用具・戦型編~

エースの要請に応えるため、新1年生の指導のガイドラインを作成。

前回は卓球の前段階の話だったが、今回はようやく卓球のお話に。

 

 

◎基本的に最初は全員シェーク裏裏で良い。

裏裏である理由は、当てた時に飛び方をイメージしやすいこと、出来る技術の幅が最も多いこと、打球感が良いこと、最も多くの回転を掛けられること、などがあげられる。

分かりやすいうえに、打っていて楽しいのだ。ペン表で全国トップにいた人間でさえ、「裏は楽しい。使いすぎると表を使うのが馬鹿らしくなるからあまり触らないようにしておく。」などと冗談を言うほどなのだ。この楽しさを、醍醐味を、卓球を選んでくれた子供たちには知ってもらいたい。

 

◎同じ裏裏でも、中ペン<<シェーク

裏裏であれば中国式ペンでも同じではないか?という疑問に対して、個人的にはNO。裏裏であればこそ、わざわざシェークを捨てる必要はない。将来どうしてもペン粒をやりたい、という変わり者以外はシェークで良い。

ペンは握り方についてまず指導が必要だ。これを教わらないと強くなりづらい。それを教えられる人間が常駐できない以上、ペンでの成功は難しい。

また、高校以降続けるとなった時にシェークでないことの劣位性が際立ってくる。ラバーが重くなってきて手首の負担は増えるし、バックの操作性の悪さも障害になる可能性がある。女子の場合台上で先手を取ってフォアの一発を活かす選手は少ないため、ペンの優位性も発揮しづらい。

確かに中ペンはシェークと違う球質が出るし、サービスやドライブの回転量が多いとか台上技術の幅が広いといった、シェークにはない優位性がある。しかしながらオリンピックを目指しているわけでもないのだから、多少勝ちが減ったとしてもやりやすくて楽しいもので良い。

世界女子のトップにも中ペン裏裏は皆無だし、この学校のOGも同じ地区の全国クラスの選手も、ペンからシェークに転向している。これらのことから、シェークの方が勝ちやすいことが容易に推測できる。

 

ただし、中にはペンの方が明らかにボールの質が高い選手も存在する。まさに私がそうで、カットを辞めて裏裏になるならシェークよりペンの方が強くなるだろう。だからフォア・バックを振らせてペンでのボールの方が著しく良質と判断できたなら、中ペン裏裏の道を歩むのが良いだろう。

ここで注意すべきは、「ペンの方が持ちやすい」という理由でペンを選ぶのは避けた方が良いということ。ラケットを始めて握ったその瞬間はペンが持ちやすいかもしれないが、練習をしていくうちに手首が痛いだのバックが難しいだの握り方が分からないだのと言った障害に必ずぶつかる。それにペンの裏裏を教えられる人も手本も用意しづらいという問題がある。最初はちょっとやりづらくてもシェークでやっていった方が最終的により良くなる可能性は大いにある。

 

見極められればペンも良いけれど、それが大変だから皆シェーク。それでも良い。一見適当だが、失敗の可能性は極めて少ない。実際、卓球スクールやクラブでペンを最初に持たせるところは少ない。

男子だとまた少し変わってくるけれど、女子では特に中ペン裏裏<<シェーク裏裏という傾向は顕著だ。

 

 

◎本人の希望を優先すること。

最初は裏裏でやりつつ、異質の先輩のプレーを観たりラケットを借りて打ってみたりして、自分は卓球において何を大事にしたいか、どういうプレーをしたいかと考えてもらう。

多少勝ちが減ってでも自分の理想とする戦型・用具を優先するのか、あるいは用具は何でもいいから勝つことを優先するのか。

 

自分の理想とする戦型・用具を優先するというのは例えば、「バック表にした方がプレースタイルを考えると勝ちが増えるだろうけれど、私は裏裏でやりたいから表にはしない」ということ。昨年度に卒業した先輩の一人がこのケースであった。彼女の場合は小学生の時点で自分でこのように判断できたのだから驚きである。

 

 

◎勝ちを優先しての戦型・用具選び

勝つためなら戦型・用具は問わないという場合は、裏裏での育成期間中に本人の適性・長所を見なければいけない。

裏裏、バック表、バック粒、カット型、フォア表などがパターンとして考えられるが、それぞれに向く身体特性とプレーの特徴、その理由と用具についてまとめる。

 

[裏裏]

  • 手足が長い、身長が高い、身体がしなやかに動く、下半身の筋力が高い、左利きである
  • テンポのややゆったりしたラリーが得意、回転をかけるのが得意

スタート時にはもっとも簡単で楽しい裏裏だが、勝とうとすると非常に難しい。他の異質と違って回転での変化は付けづらいためラリー戦になりやすい。それをドライブで打ち抜いていく必要が生じるため、ある程度の身体能力が必要になる。

回転をかけやすい性質を活かすためには、上述の身体特性を持っていると有利である。バック表に比べるとラリーの速度はゆっくりになる(両ハンドで回転をかけるため)し、両ハンドでドライブするため多少打点が落ちても問題はない。よって、ピッチの速いラリーが苦手な人でもある程度までは問題にならない。

左利きであれば右と同じようにプレーしてもやりずらさが自然と生じるので、裏裏でシンプルにプレーしてもある程度勝ちが期待できる。

 

用具については、フォアは回転がしっかりかかるもの、バックはフォアより柔らかめでボールが前に飛ぶものを選ぶことが多い。とは言え中学スタートであれば、しばらくはオールラウンドエボリューションに両面ライガン中厚~厚でやっていける。ラバーがインパクトの強さに負け始めたら、フォアはロゼナやラクザXソフトあたりか。バックはライガンやラクザ7ソフトあたり。

 

お手本はいくらでもいるので、自分の体格やプレースタイルに近い選手、同じような用具(フォアが粘着など)やサービスを使っている選手を探そう。

 

[バック表(変化表含む)]

  • 身長が低い、体重が軽い、敏捷性が高い
  • ピッチの速いラリーが得意、上回転でのラリーに強い、ミート打ちが得意

バック表については、向いているから表に替えたというより裏裏では限界が来たから表にして変化を付けることを目指したケースが多い。つまり、裏裏でのドライブでは打ち抜けなくなりやすい、小柄な選手がバック表に変更することが多いのだ。

ラリーのテンポは速くなるので、敏捷性があると有利になる。

表を使うからにはバックで弾くのが得意であった方が良い。フォアはドライブ、バックはミート打ちでナックルを送って変化を付けていく。バックで回転が”かかってしまって”相手にとって脅威にならないようであれば再考の余地あり。

 

バックの表ソフトについて、転向して最初に貼るのは感覚が裏ソフトに近い回転系の表が良い。ブースターSA。あるいは変化表。変化表はある程度粒が倒れることにより球を持つので、実は裏裏の感覚に比較的近い。世間が思うより扱いやすい…と私は感じた。

(バックに粒高を貼って長い人間の感じ方だから、参考にならないかもしれない。)

 

表の扱いに慣れたら、もう少しナックルの出やすい表にしたいところ。ブースターEVやインパーシャルXBなど??ナックルの出る表については私がいろいろ借りてくることができるので、試打をして相手にとりづらさを確認してから決めるのもアリ。

 

日本人選手では伊藤美誠や木原美悠が挙げられるが、お手本としてはバック粒でも登場するラリータイプのHe Zhoujiaも挙げられる。

 

 

[バック粒]

  • 身体特性は問わない(?)、忍耐力がある
  • テンポのゆったりしたラリーが得意、フォアとバックで連打するのが苦手、フォアハンドは強力だがバックハンドはブロックしかできない

忍耐力を要するのは、粒高の扱いに慣れるまで諦めずに続けないといけないこと、ラリーになってもミスせず粘って反撃の機会を待てることが要求されるから。

バックの粒高を挟むことでラリーのテンポが落ちるため、ピッチの速いラリーが苦手でも勝ちを目指すことが出来る。一方で、せっかくフォアで打ったのにバックに返球されると強いボールを打ちづらいため、「バックが裏か表だったらなぁ」という場面も生じる。

 

バック粒には大きく分けて二種類のタイプが存在する。

バックはブロックとプッシュ中心、バックでチャンスを作り最後はフォアで行くというフォア優位型と、バック表と同じような両ハンドラリーをして変化を付け得点を狙う両ハンド型だ。どちらにしても、バックの粒だけで勝ちを目指すことは誤りである。バックは徹底的にミスをしないように訓練する。

フォア優位型は自分が粒高で打ったボールに対する相手のツッツキを狙い打てるよう、強力なフォアハンドを身に付けることが望ましい。一方で、バックはミートやドライブが出来なくても短く止めるブロックとプッシュさえできれば良い。

 

どちらのスタイルも、最初はスポンジ特薄のカールP3αが良い。バックのラバーが薄くなるとフォアの弾みが落ちるのとラケット全体の重量が下がって球威が下がるので、フォアは厚以上に。粒高の扱いに慣れたら、それぞれの戦型に合うように用具を変えていく。

 

フォア優位型は、バックでチャンスを作りたい。そのためには回転の変化だけでなく、ボールの長短の変化を付けて相手を前後に揺さぶりたい。よって、短く止めやすい低弾性のOX(スポンジ無し)のものが良い。カールP3αのOXが良いだろう。

 両ハンド型は逆に、スポンジの厚さを上げていく。薄~中までスポンジが厚くなれば、スポンジがクッションとして働くので球持ちが良くなって、変化は小さくなる代わりに打球は安定する。特薄での練習期間の時点で非常にバックが安定しているなら、出澤選手のようにOXで粘るという選択肢もある。うーん、こちらについてはどのラバーがいいのか…勉強します。お手本はHe Zhoujia(何卓佳)、福原愛など。

 

 

 [カット型]

  • 小柄でない、忍耐力がある、新しいことへの挑戦を厭わない、物事を割り切って考えられる
  • ゆったりしたラリーが得意

 

上記三つのいわゆる”攻撃型”とは全く別の生き物。打法自体は難しいが、戦略的にはシンプル。相手に打たせて、それをカットで返球しながらミスを待つ。あるいはチャンスを作って反撃する。

攻撃型がサービスの上手さを比較的早い段階で要求されるのに対し、カット型はレシーブから強打されないサービスさえ出せれば、県以上でも試合になる。

 

高身長である必要は必ずしもないが、150cm前後になるとやや厳しいかもしれない。(が、それでも本人が望むなら問題はない。予測と運動量でカバーしよう。)

忍耐力については、カットを教えられる人間が常駐できないため、打法の習得に時間がかかるから。また、攻撃型に比べればラリーが長くなるので焦らず急がずどっしり構えられる精神性を備えているとより良い。

最も多くの打法を駆使する戦型なので、カットとツッツキだけに拘らずドライブ・スマッシュ・カーブロング・ロビング・ブロック・プッシュ・反転などをどんどん取り入れていけるような性格が望ましい。

強打で打ち抜かれても「ハイハイ、強い強い」と割り切れる、ある種冷めた部分もあるとより良い。

 

シェーク裏裏で一通り練習した後でカットに転向するなら、ラケットをカット用に替えてバックは粒高か表ソフトに変更する。

ラケットは弾みが弱すぎないもの。松下浩二やティルナ。デフプレイセンゾーは安価で良いラケットだが、中学女子のボールをカットするには弾みが弱いかもしれない。ボールをどうしても抑えられないがボールを飛ばすのは上手な人はデフプレイでも良い。

フォアはライガン、VS<401など。テンションのかかったラバー、例えばヴェガヨーロッパなどは”勝手に飛んでいく”ので少し難しくなってしまう。

バックの粒高は、まずはカールP4特薄で。粒に慣れてもっと変化を欲した場合はカールP1Rへ。

 

 

(更新中?)