新チームへ part2/2

 前回の続き。

 

 

選手の発言タイム

一通り話した後で、一人一つずつ発言してもらうことに。疑問・要望・感想、あるいは私が話したことに関係なくても良いし、今日の3年生の試合を観て思ったことでも、卓球や部活に少しでも関係のある事なら何でも、ということで。

 

Q1. バックハンドの回転量を多くしたい

→それは下回転と上回転、どちらに対してか。また、その目的は安定して入れるためなのか、相手のブロックを高く返球させたいからか。

→下回転。安定していれたい。

 

⇒多球練習でしつこく繰り返し練習すること。バックハンドが得意な実業団の選手曰く、「みんなバックが苦手というが、そういう人は大して練習をしていない。フォアハンドと同じくらいの練習量を経れば誰でもバックハンドは上手くなる」

ただし練習する中で、回転をかける感覚を意識し自分でチェックしながら、実験しながら繰り返すこと。

 

 

Q2. 練習の休憩時間でないのに座っている人がいること、いつも同じ人と打つことは良くないと思う。

⇒個人的には、休憩時間外に座って休むこと自体は構わないと思う。人それぞれ身体の強度や体調の変化があるし、何もなくても打たないなら立っていろとか、無理に打たせたりとかは望ましくないと思う。それらは強制されるべきではない。

休憩時間について、問題の本質は選手のやる気・モチベーションである。つまり、卓球に熱中できていないからそうなる。これから技術の練習をして上手くなれることを知ってもらい、卓球をより好きになってもらう。練習の内容、やり方も伝えていく。そうすれば自然と、練習中の集中力は上がっていくはず。

一生懸命に練習をすれば、身体が疲れてしまったから休む、ということは生じてくる。これが卓球に真剣に取り組める選手になっていれば、休んでいる間に練習していた技術やポイントを復習・反芻し、いくらか回復したら自ずから練習に戻っていくはずである。強制ではなく本人の意思で自然とそうなるように、皆さんにはチームの空気を作っていってほしい。私にはそのサポートをする準備はある。

(これはエースの発言であり、2年生の中では一番懸命に練習している選手の発言であるため、)あなたの言っていることは分かるし、気持ちもよ~く分かる。けれども、なんとか今話したように考えてほしい。

 

⇒練習相手について、毎回同じ人と打つ慣習は変えていかなければならない。いつも相手が同じでは慣れたことによってボールが入るようにはなっても、実際の技術は上がらない。球質が多少違っても入る技術を身に付けなければいけないから、相手は固定すべきではない。

ただし、特定の打法やパターンを練習するのにその相手でないと成立しない場合を除く。例えば粒高のボールへの対応をじっくり練習したいから、今週は毎回Aさんと練習する…などはアリ。

逆に、5分ほどで練習相手を変えるのは良くない。その長さでは技術の発展は難しい。強豪校では、1セットが約7分半で終わることからその時間で区切って練習することもある。個人的には8~10分は同じ練習を続けないと、何も見えずに終わることが多くなると思っている。

 

 

Q3. バックハンドを強く打ちたい

⇒これも先のバックハンドの回転量同様、しつこく繰り返し練習すること。それ以外にはない。ただし、あなたはペンホルダーであるから、バックで強く打てたとしても最終的にはフォアで行くんだ、フォアの方が威力は出るんだ、というところを目指していく方が良い。

また、技術単体でも練習を積むが、それを使うためのサービス練習も欠かしてはならない。相手のボールが厳しいのに強く打とうとしても難しい。技術+相手の甘いボールとなって始めてバックハンド強打が成り立つのだ、ということを覚えておかねばならない。

 

 

Q4. フォアハンドドライブを安定させたい
Q5.フォアハンドドライブの回転量を上げたい

⇒同様に、しつこく繰り返し練習すること。また、フォアもバックも、打つのではなく振り切る、ということが重要。

 

多球練習に限らずどんな練習でも、自分の中で1つ2つポイントを掲げて練習すること。そのことによって、練習の質や濃度が上がって効率が上がり、より早く習得が出来る。何も考えずただ打つだけでは、多球でも成長が遅れていく。

例えばクロスでフォア打ちをする際、「今日はラケットの真ん中に当てることを意識してみよう」とか、「振り切ることを意識してみよう」、「ちょっと面を寝かせて打ってみよう」、「ボールに対して足の位置を合わせることを大事にしてやってみよう」など、ポイントはいくらでも考え得る。

たとえそれが間違っていても構わない。ポイントを掲げて練習することで、それが正しいかどうかも分かってくるし、疑問も生まれる。ただ打つのとでは、理解の深まりに雲泥の差がある。

 

 

Q6. 基礎練習をもっとやった方がいいと思う

⇒基礎技術を身に付けるための練習は増やすが、先述の通り、やり方は変えていく。1球を打ちあっても効果が低い。

 

 

Q7. カットもドライブもできるようになりたい

⇒もちろん、カット型を目指すにしてもドライブは練習してもらう。ただし、技術によっては絞って練習する必要がある。というのも、先の”一定のライン”説を考えれば、多くの技術を練習するほどそのラインを超えるためには練習量が必要になってくる。

だから、例えばドライブであれば低いツッツキに対するスピードドライブは諦めて、少し浮いた弱下に対する強打だけを練習する。一方で、カットとツッツキに関してはいろいろなボールを送れるように練習する、ということ。

 

 

Q8. サービスをいろいろなコースに出したい

⇒それは相手に読まれてしまうからなのか、あるいは単に自分が出したいからなのか。もちろんいろいろなところに出せることは良いことだし、あなたならサービス練習をすればすぐにできるようになると思う。

ここで考えなくてはいけないことは、いろいろなところに出すと返球もいろいろになるということ。自分が打っていくためには相手の返球が予想できた方が簡単であるから、実戦で使うコースはある程度絞られてくる。そういうことまで考えて練習できるようにしていきたい。

 

ここまでで私が思ったのは、技術単体についてこうしたい、というものが多いということ。人それぞれ何か理由があるとは思うが、「自分がこうしたいからそうする」と安直に考えるのは危険だ。例えば、(今回はいなかったが)下回転サービスを強く切りたい人がいたとしよう。だが切った分、相手のレシーブも切れて返って来て打つのが難しくなるケースがある。ドライブを安定させた結果、相手に先手を取られてしまうようなドライブになってしまう可能性もある。そうなっては自分の首を絞めてしまう。実戦で使った時に相手にとってどうか、その先自分が得点出来るかまでを考えなくてはならない。

 

 

人間に関して2点

ここまでの話の後で先生にも何かあるかお聞きして、練習の雰囲気をもう少し真剣なものにしていきたいと先生が考えていることが2年生全体に伝わりました。

 

それを聞きながら、さらに2点思い起こされたので追加。

 

ある野球選手のお話。彼は引退する際に、「私はプロ野球選手になってから、一度も楽しんだことはありません。」と言っていた。これはきっと仕事としてお金を貰って野球をしているから勝たなければいけない、そのためには楽しむことは後回し、そういうことなのだろう。

もう一人、私の大学の同期のお話。東海クラブ出身の彼女、推薦で大学に入学。練習でつらそうな様子を見て「卓球つらくない?」と声を掛けたところ、「うん…でも、楽しんでいたら勝てないから」と呟くように答えた。その時の彼女の表情を見て、これは重い言葉だなと思ったのを覚えている。

この話をしたのは、皆さんに「楽しむな」ということではない。楽しむ部分を今までとは別のところに持って行こう、ということ。

恐らく今の皆さんは、打つこと自体が楽しい、友達と打つから楽しい、という状況でやっていると思う。もちろんそれも必要なことで、私だってカットが楽しいから続けている。でも、打つことそのものだけでなく、思った通りの展開になった、狙い通りに出来て得点出来た、という所に喜びや楽しみを見出せるようになってほしい。

 

 

もう一点は、本当の団結・応援とは何かというお話。

今回の総体で、応援がいかに無力かということを感じたと思う。1本!と言ってもその1本を取るための確かなものが無い、挽回!と言っても4-10になっていてはどうしようもない…。

言葉だけで状況を変える、その場の応援だけで結果を変えることはできない。それが効果を発揮するためには、徹底した下準備が必要。

 

練習の時点でチームメイトの長所を把握しておくとか、試合を想定してここはもっとこうだよとアドバイスをし合うとか、声に出す以外にも本当の応援というものはある。

それが十分に行われた後では、(アイコンタクトを取って、練習したあのパターンだよ!あれで)1本!という応援は届く。そういうものが随所で見られるようになったとき、本当に団結した、チームとして完成したなと思えるはず。

 

 

 

(おわり)