勉強が”できない”子供たち Part1

急にね、卓球メインのお話ではないんですけれども…

卓球に絡む話もちょいとありますので…

 

 

「この子は勉強が苦手で…」「私、勉強できないんです~」

などと簡単に言っても、その原因にはいくつかのパターンがあります。

 

大別すると、「勉強ができない子供たち」には2種類あると考えています。

一つは、勉強に”取り組めない”子。もう一つは、脳の性質上学習に困難がある子です。

 

2部に分けて、私が家庭教師として接触してきた生徒さんたちや、今までに関わった学生さんたちを思い起こしながら書いていこうと思います。

 

今回は、脳の働きに限界を抱える子供たちについてお話ししていこうと思います。

 

 

 

 

学習障害とは似ているが異なる

この時点で、学習障害という言葉を思い浮かべる読者の方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら学習障害は、学校での勉強が身に付かないという状態に限りません。そもそも障害という言葉は、社会生活を送るうえで直接的に問題を生じるような脳機能の問題を指すそうです。私もかつて混同していたのですが、大学の授業で明確な違いがあることを学びました。

学習障害と言うと例えば、平仮名を正しく読めない書けないといった読み書き障害や、簡単な足し算引き算が出来ない、九九が覚えられないなどの算数障害などが挙げられます。

確かにこの辺りに問題を抱えていると、さすがに社会生活上かなりの不便を生じることが想像されますね。

 

学習障害と似ている点は、知能に問題はないということです。つまり、何気ない会話をしているだけでは異常に気付くことができません。普通の子たちと同じように見えます。

「こいつは、頭はキレるはずなんだよなぁ」と思っても、それとは全く関係なく能力が落ちている可能性があります。学習の部分に限って他の子供たちとの差異が大きく表れてくる点では似ています。

 

 

”ハザマにいる”子供たち

学習障害とも健常とも異なる状態、その二つの間にいる子供たちを個人的にハザマにいる子と名付けています。

家庭教師として今まで関わった生徒さんは40人弱ですが、その中に2人、ハザマにいる子がいました。2人とも男の子です。うち1人についてお話しします。

 

彼とは、中2か中3の時期に出会いました。会話している時点では全く普通の中学生で、大人しくまじめな印象を受けました。集中力はあり、私が出した宿題を毎回忘れずにこなしていました。

まずおや?と思ったのは、この彼の真面目な感じで、テストの点数が30点を下回っていることでした。不登校で授業を受けられていないとか、荒れ狂っていて授業を聞いていないということならば納得できます。しかしながら、彼はそういう生徒ではありませんでしたから、大きな違和感を感じました。

次に気が付いたのは、発する言葉に敬体と常体が入り混じることでした。敬語が主だった中に、しばしば常体が混入するのです。それでもまぁまぁ、中学生だったらよくある話ですよね。ですから最初のうちはあまり気に留めていませんでした。

 

何か問題があると確信したのは、算数に対しての異常に気が付いてからでした。分数同士の計算を、やたらと間違えるんですね。しかもその間違え方がバラバラなんです。

脳に問題が無くても、計算を大量に間違えることはあります。それは、計算法則を誤った状態で計算をしているからです。そういう場合は、間違い方に規則性があります。例えば分数同士の足し算なら、本来分母をそろえてから分子だけを足すところを、分母同士、分子同士を足してしまう…みたいな。

まぁまぁ、これは途中式や解答をよく見ればすぐに解決できます。正しい計算法則はこうですよ、と説明すれば、脳に問題のない子供たちは理解を修正してすぐにできるようになります。

彼の場合は間違え方が不規則で、正しい法則を教えてもその場では出来るけれどもすぐに出来なくなってしまいます。

 

ある時、分数同士の足し算引き算について説明しました。皆さんご存知の通り、足し算引き算におけるルールは同じです。分母を揃えて分子のみを計算すれば良いですね。

説明すると、ゆっくりではありますが足し引きはクリアします。

出来たのを見て、次は掛け算割り算です。こちらも計算法則は共通していますね。割り算は割る分数を逆数にして掛け算とし、分母同士・分子同士を掛けます。その過程で分母分子を共通する数で割るか、答えを出してから約分するかの処理をして終わりです。

これも、説明するとクリアします。

 

じゃあ、出来るようになった足し引き掛ける割るを確認しよう、ということで1問ずつ問題を出すと、最初の足し算引き算の問題を、最後に説明を受けた掛ける割るの法則で解いてしまうのです。

いやいや、足し引きはこうだよ~ともう一度説明をします。すると、解けます。

じゃあ次は掛ける割るだね、と説いてもらうと今度は足し引きの法則で解いてしまいます。掛け算なのに、分母を揃えて上だけ掛けてしまうのです。

これが、週1ペースで4,5回。つまり1か月続くのです。

 

 

同じ時期に同じ学年の男の子をもう一人教えていたこともあり、明らかに何かがおかしいぞと気付きました。

彼の場合、短期記憶に何らかの問題を抱えていたのかもしれません。だから英単語を覚えることや理科社会の暗記も苦手としていた記憶があります。

ご両親に彼の苦手は本人の努力ではどうにもならないかもしれないことを伝え、ちょうど筑波大学には障害を専門に研究している先生たちがいましたのでそちらに接触してみるよう伝えました。

ご両親は理解してくださり大学へ連絡を取っていたようですが、大学として受け入れるべきより支援を必要とする子供たちがいるということで、診断等を受けることはできなかったようです。ですから、これでも彼の場合はまだ学習障害まで至らないか、あるいは非常に程度が軽いということなのでしょう。

 

 

脳の問題に早めに気付くためには

学習障害の場合は、治療されて治るということはありません。大切なことは、本人にとって学習しやすい方法を見つけることです。

脳の機能による学習能力の低さも、同様に考えるべきでしょう。4つを同時に短期記憶することが難しいなら、2つだけを大量にこなして長期記憶へ移してからまた2つを新たに学習する方が良いはずです。人より時間はかかるし一般的な学力に達するのは困難でしょう。それでも、本人の中では前進することができます。

そのような支援をするためには、脳の機能の問題に周囲の人間が早めに気付く必要があります。

 

一番気付きやすいのは学校の先生かもしれませんが、数十人の生徒を相手にし授業以外の業務をこなしながらでは難しいのかもしれません。あるいは気付いたとしてもそこに時間や労力を割けないという現実もあるでしょう。

だからこそ、家族が気付かなければいけません。中2中3になるまで誰にも気づかれないと、その子の人生はどんどん閉じてしまいます。

 

ここで、小学校のうちに注意すべきポイントを挙げておこうと思います。大体学年順に並べていきます。

  • 九九を覚えるのに半年以上かかる
  • 計算の間違い方が不規則・バラバラである
  • 頻繁に、テストで60点を切る

 

算数だけを見ても、早ければ九九を覚えだす小学校低学年で気付くことができます。せいぜい2,3か月もあれば九九のほとんどを覚えられるでしょう。

遅くとも小学校高学年になり分数の計算や割合の問題などを学習する頃には、差が分かりやすくなってくるはずです。

 

一番簡単な判断基準は、テストの点数です。ちょっと脳のトレーニングを積んできている子(これについてはまた後日お話しします)であれば、小学校のテストはほとんど間違いようがありません。100点が当たり前です。教科を問わずほとんどのテストが90~100点の中に収まってきます。偏差値65以上の高校に合格する人間は、ほぼこれにあてはまるはずです。

脳に問題はなくトレーニングを積んでいない子、つまり授業外での自習は学校の宿題(漢字練習と計算ドリル)だけであとは遊んでいるかスポーツをしているかの子供たちでも、まぁ60点を切ってくることは稀です。60~80点を取ることが多く、得意なジャンルで90点以上を取ることもあります。

これが60点を切ってくると、考えられることは2つです。何らかの理由で全く授業を聞かないでいるか、脳に問題があるかです。(出歩きが異常に多くて聞いていない場合はまた別の障害が関わっている可能性もありますが…)

 

ですから親御さんはまず返されたテストの点数を見てスクリーニングし、50点を切るようなら点数だけではなく間違い方まで注視しないといけません。そこで違和感を感じたら、正しい解き方を説明して、あるいは一緒に復讐をして、お子さんの脳が正常に機能しているかどうか観察すべきです。

より早く気付くことで、本人の可能性を伸ばす選択を採ることができます。

 

 

どうやら脳の問題だぞ…と思ったら

本人にとって学習しやすい方法を一緒に探していくのと並行して、思いっきりスポーツ中心に舵を切ることをオススメします。

小学生のうちに気付いて習い事としてスポーツを始めておけば、部活において一歩秀でることができます。その競技においては、中学・高校とそれなりに自己肯定感を得ることが出来るでしょう。

そういう意味では、より個人レッスンに近い形で習うことが出来る卓球は大変優れています。中学スタートの選手たちと、圧倒的な差を付けることができます。卓球を習わせながら、いろいろなスポーツに触れさせて身体能力の向上を図るのが良いと思います。

 

理想は、その競技で大学まで進学できるレベルに到達することです。その域まで達すれば、その競技に関わる仕事で生きていくことができます。特に指導者としての仕事や、スポーツのインストラクター等に就くことが出来るのが大きいと思います。

知能に問題はないわけですから、会話も問題なく出来て人の気持ちも分かるし、スポーツを仕事にする分には問題が生じにくいと考えます。算数や暗記的な要素からはある程度離れて仕事することができるはずです。

学習に問題があってもその人の能力を最大限に生かして輝ける仕事が生まれる点で、スポーツは素晴らしいと思っています。

 

競技的にそこまで達しなくとも、体や身体能力を鍛えておくことで、体を動かすタイプの仕事は全般につくことが出来るでしょう。選べる幅が広がることが一番大切で、その中で選んでやってみて出来る仕事を続けていくのが良いでしょう。

 

 

こぼれ話

バラエティー番組等で、「こいつめっちゃアホなんですよ~」と芸人さんが笑いを取ることがありますね。イカレてんなぁと笑えるものが多い一方で、それハザマにいるんじゃないか…?というエピソードもしばしば聞きます。

ちょっと笑えないぞ…と思う一方で、芸能界もそういう人たちが輝く場だなぁとも思います。

 

 

(Part2へつづく)