学校によっては三年生最後の大会が終わり、1,2年生が中心となった新しいチームとして始動する時期になりました。
直近の大会での試合内容を見て、指導に携わる方はいろいろ思うところがあるかもしれません。そこで今回は、指導者として試合内容や結果をどのように捉え、その先にどう活かしていくかというテーマで考察していきます。
- 現実が選手の実力であることを受け入れる ~もっとできた、は幻~
- 選手のミスは指導者の責任 ~指導者の基本的な姿勢~
- 選手は安心して試合に臨めたか ~安心と挑戦の循環~
- 試合で起こるミスをどう減らすか ~練習の段階で未来を想定する~
- 事前に必要な仕込みは何か ~技術練習以外の準備~
現実が選手の実力であることを受け入れる ~もっとできた、は幻~
選手の試合を振り返ったとき、「もっとできたはずだなぁ」とか「あの試合は勝てたんじゃないか」などと思うことがあるかもしれません。そんな方はまず、その思考を取り除くことから始めていただきたいです。
実際には、試合でできたことが全てなんですね。普段の練習ではきっと、試合よりも上手くプレーできていたと思います。しかしながら、それはあくまで練習です。試合で練習の10割が出ることは無いと考えて、試合でできたことが選手の実力と捉えましょう。
また、卓球は相手がいるスポーツです。相手がうまくプレーしたために、選手が良さを発揮できない場合もあります。それは相手が素晴らしかった、ということに他なりません。
試合を観ている人、あるいは選手自身が思う「もっとできた」は幻想です。選手も指導者もこのことを理解して試合に臨み、試合内容や結果を振り返ってみませんか。
選手のミスは指導者の責任 ~指導者の基本的な姿勢~
試合で選手が簡単な(に見える)ミスをした時、指導者としては、そのミスが指導者の力不足によって生じたのだと考えるべきです。つまり、試合までの練習の中で、試合でのそうしたミスを減らす・防ぐ指導が十分にできていなかった、ということなのです。
ミスを見ると、選手を責め立てたくなる方もいらっしゃるでしょう。競技レベルが上がり、勝たなければ価値無しのような世界で、かつ普段から正確にボールを入れるための練習・指導を十分にしてきた前提があるなど、気が抜けていたことによるミスを叱責することが妥当である場合もあるとは思います。
しかしながら、学校の一般的な部活動やそれに準ずる競技レベルであれば、指導が不十分だったと捉えて指導者が自身を振り返り、選手を伸ばすチャンスにしていきませんか。
(ここでの話は、ベンチワークで触れた「選手のミスを責めない」という考え方に繋がる部分もあります。)
選手は安心して試合に臨めたか ~安心と挑戦の循環~
指導者がベンチにいたとして、選手は安心して試合に臨めたのかを振り返ります。これはつまり、選手と指導者の間に信頼関係があったかどうかという視点です。
的確なアドバイスをしていても、信頼関係がなければアドバイスの効果は十分に発揮されません。選手がアドバイス内容を信じて、思い切ってプレーすることができないからです。
選手は試合中、ベンチの指導者の様子を窺いながらプレーしてはいなかったでしょうか。指導者は、選手のその場の様子や気持ちも踏まえてサポートができていたでしょうか。
普段の指導で、選手の良さを認めることができていたか、信頼関係を築けていたかを振り返るタイミングです。選手を責めるのではなく、指導者が自身の振る舞いを振り返ってみませんか。
試合で起こるミスをどう減らすか ~練習の段階で未来を想定する~
試合で頻発するミスを減らすために、以下の二つの視点で考える必要があります。
- そもそもプレーの展開として良いか、他により良い選択肢はないか
- 実戦を想定して練習できているか
1.は試合で起こりうるミスを、別の展開や技術を選択することで減らしていく方略です。、下回転に対してドライブしようとして大量に失点する場合を考えると、サービスやツッツキのコースを変えることで自分が打ちやすいツッツキを相手に要求する
という戦略を取ることができます。これは練習段階で構想を練って練習しておく必要があります。具体的には「回り込んで3球目攻撃をしたいから、相手のバックサイドに横下回転のサービスを出そう」とか、「ツッツキで粘って、フォアサイドに来たツッツキだけ打っていこう」などです。
あるいは、そもそも下回転に対するドライブではなくツッツキを磨いて得点しよう、という戦略も有効です。ドライブばかりが攻撃の手段ではなく、ツッツキも回転の差やコース、高さ、スピードを自在に扱えるようになれば、攻撃力を持たせることができます。
目的が得点することであれば、特定の技術を使うことは手段でしかありません。技術そのものを磨くだけでなく、違う技術で補完することも考えてみませんか。
2.は、選手が試合でできること、試合で起こりうる状況を想定して練習できているか、ということです。例えば、試合で人はどうしても力みがちになるから、普段の練習ではドライブのスピードよりも回転、「収めること」を重視して練習しておく…とか、試合では少し浮いたボールも来るから、少し高めのボールを打つ練習をしておく…などが挙げられます。試合を観た後のタイミングで、現実に起こりうることをもとに練習内容を振り返ってみませんか。
事前に必要な仕込みは何か ~技術練習以外の準備~
技術練習以外にも、試合までに仕込んでおけるマインドセットや準備の仕方がたくさんあります。試合当日、その日できることを最大限発揮するためにどんな準備が必要だったかを振り返る機会でもあります。
試合では多くの選手が緊張します。大人でも、競技レベルの高い選手でも緊張します。それらの緊張がある状態で、より良いパフォーマンスを出すためにどうすれば良いのかを考えておくことが重要です。
例えば、6点ごとのタオルを取ることを普段のゲーム練習で意識付けしておいたり、緊張で困った時には「戦術的に何をするかを考えるようにする」と決めておくなど、試合の現場用の準備が必要です。
試合は練習と比べ非日常的で、ある種の緊急事態です。緊急事態に備えた心がけ、方略を準備しておきませんか。(ここについては別記事でいろいろアイデアをまとめたいと思います。)
(おわり)