今回は、カット型の選手について考えます。ただし、指導者無しでカット型を目指すことはかなり困難なので、選手本人がどうしてもカット型になりたい場合に限ります。
私がみている選手向けに考えたものをまとめる形になります。
試合での戦術(とそこからの展開)
- 長い下回転系サービスからのツッツキ or カットでのラリー
- 横 or 上回転系サービスからの3球目攻撃 or サービスエース
- 短い下回転系サービスからのツッツキ or カットでのラリー
1がメインの戦術、3は1だけで試合を優位に運べない場合にやむを得ず使う"サブプラン”です。2は、相手レシーブの待ちが下回転のみになったタイミングで混ぜて奇襲し得点を狙う戦術です。
基本的に、1,2,3をおよそ8:1:1や7:2:1の割合で出していきます。1セット11本先取なので、例えば11-9や10-10のように計20点分になるまでには互いに10回ずつサービスを出すことができます。その内の7~8回は長い下回転系サービスで、相手の待ちを絞らせないため(≒レシーブを簡単にさせないため)に他のサービスを混ぜます。と言っても、攻撃型のように3球目攻撃のチャンスをたくさん作りだす必要がないので、自分が優勢のまま試合が進んでいるなら他のサービスを混ぜなくても良いです。
カット型が自分の技術やラバーの性質を活かすには、ツッツキとカットでのラリーに持ち込む必要があります。そのために一番避けたいのは、自分が台の近くにいるときに強打されることです。よって、下回転の多いサービスを主に使います。
長い下回転系サービスを多く使う理由は、相手のレシーブを長いツッツキかループドライブの2つに限定できるからです。この2つだけであれば相手のレシーブが台上で2バウンドすることはないので、サービスを出した後に台から少し距離を取って待つことができます。
一方で、下回転系でも短いサービスを出すと、相手が意図していなくてもストップレシーブされる可能性があります。そうなると、相手のレシーブがツッツキとストップで下回転系だけだったとしても台から出るか出ないかの判断が必要になり、レシーブへの対応が複雑になります。また、サービスを出した時点で相手のレシーブが台から出るか出ないかを予測しづらいため、サービス後に台から離れて待つことにリスクが生じます。さらに短いサービスに対しては、フリックや流しなどいろいろなレシーブが可能で、相手が初級者でもこちらの予想しないレシーブが返ってくる可能性があります。曖昧なレシーブをされて自分が崩れてしまわないように、ツッツキとループドライブの2つだけに絞らせることが重要です。
下回転系サービスを多く出していれば、相手の待ちは自然と下回転へ絞られていきます。相手があまり考えず(=判断せず)にツッツキレシーブをしている状況になったら、横回転や上回転系のサービスを出して奇襲をかけます。この時一番大事なことは、下回転系サービスと同じようなフォームから出すことです。これができていれば、後は自分の得意に合わせて長いサービスか短いサービスかはどちらでもOKです。
サービスでの得点を狙うなら、相手コートの深いところ(=台の端)へスピードと回転のあるサービスを出しましょう。ただし、相手が判断してドライブで返してきた場合は自分が準備する時間が短いのでリスクがあります。
リスクを下げるとしたら相手のフォア前に横回転系のサービスを出し、ツッツキレシーブをさせてボールを浮かせます。このパターンの注意点としては、相手がツッツキレシーブをしているためレシーブが浮いていても若干の下回転が入っていることです。そのことを意識してサービスから3球目攻撃の練習をしておく必要があります。
練習すべきサービス
- 長い下回転系サービス(バックハンド推奨、フォアハンドも可)
- 短い横 or 上回転系サービス
- 長い横 or 上回転系サービス
- 短い下回転系サービス
優先度は1>>2≧3>4です。
1はメイン戦術であるツッツキとカットに持ち込むため必須です。低く早くて長い下回転系サービスを練習しましょう。コースは右利きのバック、ミドル、フォアへ出せるようにします。できるだけ同じ構え・フォームからコースを出し分けられると相手はレシーブが難しくなるので、その点も意識して練習できると良いです。
2,3は3球目攻撃を狙うためのサービスです。2≧3である理由は、短いサービスの方が相手がツッツキレシーブをしてくれる可能性が高いからです。長いサービスだと、相手の判断が遅れてもとっさにドライブやブロックの延長でレシーブできてしまう場合があります。短いサービス、特にフォア前は強く打つのが難しいので、下回転系サービスと同じようなフォームで出せばなおさら、ツッツキレシーブをしてくれる場合が多くなります。ただし、長いサービスの方が回転量は多くできるので、横回転や上回転系の回転量に自信がある人や短いサービスが難しいと感じる場合は、長いサービスで横か上回転系を練習しましょう。
4も出せると、相手に合わせて1と4の配分を変えながらラリーに持ち込むことができる点でより良いです。4で重要なのは、できるだけ長いサービスと同じような雰囲気・勢いで出すことです。打球する直前まで相手に気配を悟らせないように出せると最高です。長いサービスを出すと良い展開にならない相手に対しては、このサービスを多く使ってツッツキレシーブをさせ、ラリーに持ち込みます。
ラリーでの展開・考え方
- 右利き相手のバックにツッツキやカットを集めよう
- ツッツキでラケットを反転させて回転の変化を付けよう
- 相手が巧く対応できない球質・コースを探そう
- すごいボールを3回返すより、そこそこのボールで10回返そう
- カットについて、バックは鉄壁、フォアは困ったらカットしなくてOK
1の理由は大きく2つです。1つは、初級者段階では多くの選手がバックサイドから強く打てないことです。よって、ツッツキやカットをバックサイドへ集めるだけで、相手の強打を封じることが可能です。ややレベルが上がると、回り込んでバックサイドからフォアハンドドライブで対応してきますが、クロスにくればバックカットで徹底的に粘りまうす。相手が困ってストレートに打ってきたら、クロス、つまり相手の空いたフォアサイドへカットやドライブ、カーブロングで返球すると、相手は大きく動いて打つことになるので崩れていきます。もしそのボールを相手がうまく返球してきたら、また相手のバックに集めて仕切り直します。
1の問題点は、相手が打ってこない場合どうするのか、ということですが、そこで2が重要になります。相手がドライブしない場合はツッツキでのラリーになるので、バック面が粒高や表であれば、時々反転してバックツッツキを裏ソフトで行います。できる人は、フォアツッツキを粒高や表でするのも良いでしょう。ここで重要なのは、時々反転して違う回転を混ぜることと、反転したときに回転量の差があることです。ですので、裏ソフトでのバックツッツキは回転量を多くする意識を持って、普段から練習しておきましょう。
個人的には、3がカット型の面白さの一つと思っています。反転して回転に変化を付けたり、バックに集めて時々フォアやミドルへツッツキを送ったりしていく中で、相手の技術の穴を探します。明らかに失点が多い球質やコース、あるいはうまく返球できない・強く打てないものが存在します。例えば、粒高のツッツキをうまく返せるなら、反転して裏ソフトで切れたツッツキを送ればボトッと落とす可能性が高いです。バックサイドから強く打つのがうまい選手でも、フォアの端や台の真ん中あたりから同じように打てないこともあります。1セット目は相手の弱点を探すのだ、という狙いをもって臨んでみましょう。
4は、カット型を問わず全戦型に共通しますが、上記の3と関わる話でもあります。1セット目で相手の弱点を見つけるには、自分が1本でも多く返球して情報を集めることが重要です。相手のいるスポーツなので、自分がすごいボールを送って得点することばかりでなく、相手の苦手を突いて点をもらうことも必要です。特にカット型は、カットを台に入れ続けること自体が難しいので、回転の多いカットや低いカットを追い求めてミスするよりも、質を抑えて自分のミスを先送りにする意識でプレーしましょう。スーパープレーも平凡なツッツキミスも、同じ一点です。
5は1と関連します。右利きがバックサイドから打つにしろ、左利きがフォアサイドから打つにしろ、クロスに打つ方がリスクが低いので相手のドライブはこちらのバックサイドへ集まることが多くなります。粒高でのカットは回転量の差を出すのが難しいので、バックカットはとにかく無限に返せることを目指しましょう。バックカットがたくさん返せれば相手は困ってフォアへドライブしてきます。フォアであれば、カットしても良いし、ドライブ・ブロック・カーブロングなど上回転で返すこともでき、回転に差をつけることは簡単です。フォアで裏ソフトのカットは難しいので、カットの練習はしますが試合ではカットにこだわらず、試合のその日その場で一番入る確率が高い技術を選んでメインとして使いましょう。ここでも4が関係していますね。フォアカットを1本いれるより、ブロックやカーブロングで5本入れた方が勝ちに繋がります。
必要な技術練習
- [単]フォアとバックのツッツキ
- [単](両面でラバーが違う場合は)ラケット反転してのツッツキ
- [単]ループドライブに対するフォアとバックでのカット
- [単]浮いたツッツキに対するドライブ・強打
- [複]サービスからツッツキでのラリー
- [複]サービスからツッツキとカットでのラリー
- [複]サービスから3球目攻撃
- [単]強打に対する前陣での両ハンドブロック
優先度が高いものから順に、上から並べました。[単]は技術単体の練習を意味します。試合での展開や戦術が完成した料理だとすれば、料理を作るのに必要な”食材”を準備します。食材の準備は別の記事でも書いたように、個人の技術レベルに合わせて多球練習、半多球練習、1球練習から選択して行います。
1、2:最初は裏裏でスタートしていることを想定しているので、裏ソフトでの台上でのツッツキは10~15往復程度できることを前提とします。(もし裏ソフトでのツッツキが不安定であれば、攻撃型の人と同じようなツッツキを練習しましょう。)
カット型は台上でのツッツキとは別に、台から距離を取ってのツッツキを練習します。やり方はYoutubeで探せばいろいろ見つかると思うのでここでは割愛します。まずはワンコースで、クロスとストレート両方練習します。同級生とツッツキして、20往復続くくらいを目指しましょう。安定して10往復以上できるようになったら、相手の半面対こちらの全面で同じく20往復を目指しましょう。そうして全面への対応に慣れながら、途中で反転ツッツキを入れる練習もしていきます。
4:粒高でのツッツキに対して相手のツッツキが浮いてくることが多いです。まずはフォアサイドに浮いてきたツッツキを打つ練習をしましょう。打つことに慣れてきたら、バックサイドへ浮いてきたボールも動いてフォアハンドで打つ練習をしていきます。
8:ブロックも練習しておきたいのは、ロングサービスに対するレシーブが速いボールだからです。3球目攻撃は相手のレシーブのコースを予測して行いますが、時には予想外の場所へレシーブが来ることもあります。そうした予想外のボールに対してはブロックで返球し、そこからラリーに持ち込んで粘りましょう。
今回のポイント
- カット型は下がって待てるので、思い切って下回転系の長いサービスを多用しよう。
- 相手の打法をツッツキかループドライブに限定させて、自分のツッツキとカットを活かそう。
- 相手の判断が甘くなってきたら、下回転系以外のサービスから奇襲しよう。
- ツッツキでの反転を駆使しよう。これは得点源になりうる。
- バックカットは鉄壁、フォアはカットにこだわらなくてもOK。ツッツキは相手より先にミスしない意識、カットは質を落としてでも一本でも多く返す意識を持とう。
(おわり)