中学生へのベンチアドバイス

これも私が普段から気を付けていることやこうしたいなぁと考えていること、どうかなぁと思った点についてまとめます。

 

1 指導者と生徒間での信頼関係

2 試合前に伝えたいこと

3 試合中のリアクション

4 セット間のアドバイ

5 試合後のケア

 

 

1. 指導者と生徒間での信頼関係

普段から信頼関係を築いておくことが、円滑な指導のためには必要。とやはり教科指導では理解され実践されているようですが、部活動ではこれが不足している場合が多いようです。

2節以降で記述することはほとんど、指導者が生徒に信頼されていることを前提としています。

信頼関係を築くのに一番良いのは「対話すること」だと考えています。例え指導者側で確信をもっていても、一方的な発信は避けるべきです。指導者の考え自体が間違っている場合、間違ってはいないがその生徒の現状には適していない場合、生徒の中に不満がある場合など、指導者と生徒の間ですれ違いが起こっている可能性があります。

「今の説明分かる?」とか「今の考えについて君はどう思う?」といった言葉をかけ、生徒から受信することが重要です。(これも教科指導ではよく用いられる言葉と思います。)

すれ違いに気付かないままそれを繰り返していくと、生徒と音信不通になってしまいます。発した言葉は届かず、生徒は言いづらいと感じてますます発信しなくなります。

 

いつも叱ってばかりだとか信頼関係が無い状態で生徒を褒めても、心には届きません。「あぁこの先生はとりあえず褒めているんだな」と、中学生にもなれば見抜いてくる生徒が増えてきます。

 

 

2. 試合前に伝えたいこと

私が見てきた中には小学校低学年から始めた人もいれば中学から始めた人もいますが、彼らの多くが知らない「試合の進め方の大枠」を事前に伝えておきたいです。

 

①1セット目で情報を集めること

→同じようなことを繰り返すのではなく、色々なコース・回転・長さ・速さのボールを送ってみるということです。その中で自分の得意が通せるか、相手の苦手が見えるか探っていくことが試合の展開に大きく関わりますし、生徒の(卓球以外の)能力を伸ばす機会にもなると考えています。

こういうことも誰かが伝えないと、ただ闇雲に打球するばかりになってしまいます。

 

②試合全体のテンポに気を配ること

→中学生の試合は1セットが2,3分で終わっていることが多いのに気付きました。ポイント間に間(ま)がなく、6点ごとに使えるタオルを取ることもほとんどありませんでした。

試合が優位に進んでいても、なぜ勝てているのか分からないまま終わってしまうのはもったいないです。何が効果的かを観察して作戦を練るという過程を通じ、生徒たちは成長できると思います。何より形勢不利である場合、そのまま試合を続けても状況は改善しません。ボールを拾いにいく時間で考えたり、戦略的にすこし間を長くとって相手の勢いを阻害したりすることを実践していくべきです。タオルについてはより長い間を作り出せることや考える時間が多いことから、生徒たちに利用するよう伝えています。

この辺りもクラブで指導を受けているような生徒でなければ知識として持っていません。私は知識として持っていましたが、撮影した映像を確認するまで気付けませんでした。こういった細かいところにも気付けるようにしたいところです。

 

 

 3. 試合中のリアクション

否定的な言葉や表情を振り撒く先生方の多いこと多いこと…。これをされて気分が上向く人間は非常に稀だと思います。

先の記事で少し触れましたが、得点したら褒めて失点したら怒るのは違うと思います。失点した時こそ励まさないといけないし、全部が間違っているケースは少ないのでそこを観察します。

私はたとえミスしたとしても果敢に挑戦したのであれば拍手します。得点時には生徒の気持ちを高める一方で、失点時には「点は取られたけど今のでいいんだ」という気持ちを伝えることを狙っています。

 

試合の立ち上がりで攻撃をミスしたからと言って、ドライブ型に対し「打つな!」というのはどうなのでしょうか。ドライブ型が打つのをやめて守りに入ったとして、戦況は良くなるでしょうか。多くの中学生を想定したとき、状況は悪くなる一方と思います。ドライブよりブロックの技術レベルの方が高い中学生はほとんどいないですし、自分がミスし指導者からは追い込まれた状況下で、相手に打ち込まれたボールをブロックして勝ちに繋げるのは至難の技です。どこがうまくいっていないかを観察しつつ「もう少しだ!」などと声をかけるようにし、ミスしているボールを入れていくための打開策をセット間で伝えるようにします。

試合中に立て直すことを経験しないと、いつまでたっても緊張した場面でドライブができないままになってしまいます。何とか一本入れるところまで持っていき立て直すこと、そしてそれを経験させるのも指導者の役割と考えています。

 

 

4. セット間のアドバイ

私はセット間のアドバイスで、スイングや身体の動きを大きく矯正するような表現は控えています。試合中に動きを大きく変えられるほど、試合は簡単ではないからです。また、自分の動きにばかり意識が行ってしまい相手を観察できなくなることも懸念されます。

そもそも動きを直接「こうしなさい」と言ってもあまり効果はないと思います。頭では理解できる生徒が多いと思いますが、実際にそれを実行できるなら苦労はしません。ですから動きに言及するとしても、「大変だろうけど、もう少しだけ思い切って振ってごらん」などと漠然とした表現に留めるようにしています。(県の上位以上になると基礎技術が完成されているのでまた変わってくるでしょうが。)

 私が利用している打開策としては、①返球するコースを一つに絞る、②コースは大体あっているので前後の力加減に強く意識を割く、③ゆっくりで高いボールで良いからたくさん返すことを目指す、といったものがあります。一つずつ見ますと、

①返球するコースを決めてしまうことにより、迷いが一つ減るためミスが減る可能性があります。

②緊張もしくは技術レベルの問題で、力のコントロールが狂っている場合に伝えます。これも当人にとっては難しい話とは思いますが、気にすることを絞ることでやはりミスが減る可能性があります。

③これも言うのは簡単ですが実際には難しいことです。生徒が強いボールを打とうとしすぎている(ように見える場合)や、ラリーは続くけれど途中で我慢できなくなって無理に打ってしまっている場合に伝えます。後者においては効果は大きいです。また卓球を初めて半年~一年のような、基礎技術を練習中の生徒にも伝えます。

 

細かい戦術的なアドバイスについては、私自身の戦術レベルがまだまだ未熟なためにあまり行えていません。ここは今後勉強していきたいところです…;;。

ただ、「このサーブはこのコースにも出したほうがいいと思うがどうか」とか「この展開でやられることが多いからこうするのはどうか」といったように、より有効利用できそうな部分や明らかに避けた方がいいものについては言及します。その上で生徒と相談し、生徒自身に選択してもらうようにしています。絶対にこれをやるようにとは言いません。外から見てこれがいいと思っていても、実際に戦っている生徒自身の心理状態や相手の見え方によって実行できない場合があります。その辺りを聞くことも狙って、相談をするようにしています。

 

 

5.  試合後のケア

長いお説教や怒鳴り声の多いこと…。

私から見れば良いプレーが多いのですが、先生方は怒ります。「厳しい指導」ではなくもはやエゴの域に達しようかといったところです。

 

これも広く認知されていることですが中学生の世界は狭く、それゆえ部活動が精神的支柱となっている生徒は少なくありません。それを壊すことは彼らの人生にとっても大きな損失になります。

試合中のマナーが悪いならそれは注意すべきですが、卓球については否定するのではなくどうしたらより良くなるか提案するような言い方を心掛けたいです。また必要なお叱りについても生徒を観察して、理解した・反省できている様子がみられたらそこで切り上げるべきです。試合会場でいろいろな学校のお説教()をこっそり聞いていると、必要以上に長い場合が多いと感じます。

先生方も子供だった頃に経験したのではないでしょうか。先生のお説教に対して、「もう分かったのに、この先生はまだ言うのか」と。

 

なににしても、(状況にもよりますが)落ち込んでいるような生徒に対して試合会場で強く言うことは避け、別日に場所を選んで伝えるようにしたいです。