【第1回】部活動における卓球の優位性

様々な種目がある部活動において、生徒が卓球を選択することの価値はいったいどこにあるのでしょうか。

今回はこのテーマを、卓球の特性を他種目と比較しながら考察し、どんな生徒に適しているかという点まで考えます。

 

 

卓球の特性とその利点

卓球の優れた特性として、

  • 用具が軽い
  • プレー中の身体的接触がない
  • プレー領域が狭い(卓球台を挟んで向かい合う)

などが挙げられます。

用具が軽い=1回の負荷が低い であり、1度の練習で多くの打球を可能にします。例えばサッカーの練習で1度に100回のシュート練習をしたら、へとへとになるでしょう。一方で卓球では、(競技レベルが上がればもちろん運動強度は上がりますが)100回程度の打球で練習が終わることはありません。20~30分も打てば100回は優に超える回数を打つことになります。つまり、他競技に比べて大量の反復練習が容易であり、新しい運動を覚えていくのに向いているのです。

プレー中の身体的接触がないことは、大きな怪我のリスクを低減します。比較的小柄だったり筋力がなかったりしても、安心してプレーすることができます。さらに初中級者段階では、それらが不利益になることもほぼないと考えて良いでしょう。

プレー領域が狭いことは、まず運動強度が低いことにつながります。(これも競技レベルが上がれば高まりますが、サッカーやバスケットボールのような運動負荷にはなりません。)このことで、運動に対して苦手意識のある生徒にとって参入しやすくなります。また、指導者と選手の距離が比較的近いことにより、選手のプレーを観察しやすいというメリットもあります。これは、選手の工夫や努力を評価しやすいこと、フィードバックを与えやすいことに繋がります。それまでできなかったことができたとか、より質が上がったとか、他の人に無い新しい発想で打球してみた、といった点を目視し、評価し、声掛けする、という流れが容易に実行できるのです。部活動において「どう褒めるか」という点も別の記事で考察しますが、距離が近いからこそ指導者が適切に声がけを重ねれば、生徒たちとの信頼関係を育むことができ、生徒自身がもっと頑張ってみようという気持ちを持つこともできるはずです。

 

こんな生徒にオススメ

これは個人的な思いも込みですが、私は運動に対して苦手意識のある生徒たちにこそ卓球を選んでほしいと思っています。大きな筋力がいらないこと、怪我のリスクが低いことはもちろんですが、大量の反復が可能であるという特性が、苦手な生徒たちにとって最大のメリットになると考えています。

運動が苦手、あるいは経験の少ない生徒でも、ポイントをおさえて十分に反復すれば、少しずつ向上していきます。この点で卓球は、子どもたちの運動能力や身体感覚を開花させる教材として素晴らしいものです。

ここで重要なことは、指導者や選手自身が、上手な他人と比較しすぎないことです。比べるべきは、その日の練習前や1週間前・1か月前の自分です。過去の自分と比べて何か成長できていれば、練習した意味があります。毎回の練習で何らかの成長があるよう、指導者は練習メニューや意識すべきポイントを考えていく必要があるのです。

「比較しすぎない」と書いたのは、部活動のシステム上、上手な他人からヒントを得ることが必要になる場合が多いからです。というのも、クラブチームやスクールと異なり、生徒数に対して指導できる大人が極めて少ないことが想定されます。指導者が頻繁にポイントを伝えることには限界があり、生徒同士でポイントを教え合う必要があります。各生徒がそれぞれ違う技術に長けているでしょうから、各々へその生徒の優れた点を伝えながら、「君はサービスのコーチ」「君はツッツキのコーチ」など、特定の技術コーチに任命するのも良いかと思います。

話が本筋からそれてしまいましたが、今回はこのあたりで。次回はどんな内容になるか未定です。

 

(おわり)