ようやく、3年生たちは嵐の中から抜け出しました。
団体戦
予選トーナメントを抜け、上位チームでの決勝リーグ戦へ。
そこで当たるチームのレギュラーはほぼ小学生スタートと思われる選手たち。そんな学校相手に1勝3敗とよく戦いました。敗れた試合についてもチームとしてのカウントは2-3ばかりで、やはりよく戦ったと思います。
顧問が関東だ関東だと繰り返し言ってきており、選手たちの中にはそれを本気にした人もいたのかもしれません。
私から見れば、関東大会出場は極めて難しいものでした。確かに昨年の新人戦で関東大会に出場していましたが、そこから伸ばす能力も顧問になければ4月以降遠征ばかりで練習時間が満足にとれない状態が続いていたからです。
戦略・戦術を仕込む時間も足りず技術自体も伸び止まり、これでは幸せにはなれない…そういう予感がありました。
比較的浅いところで、顧問が卓球を舐めているなと感じていました。
そもそも半分が中学スタートで、競技的な雰囲気が強い学校でもありません。そういう部活において、高い目標を押し付けることは良い結果に繋がりにくいと考えます。
計画的に練習すれば届くであろう場所に、目標は設定すべきです。
客観的に見て遠すぎる目標は、目標とは言えず”夢”です。憧れるものであって、実現しようと本気になると辛い思いをするばかりです。
もし関東に届きそうだったとしても、あまり勝敗の結果を意識させるべきではありませんでした。中学スタートの選手たちには重荷になっていました。
何にしても、選手たちはよくやりきりました。
個人戦シングルス
出場したのは3年生のAさんと、2年生のBさん。
顧問とAさんの相性がすこぶる悪く、顧問にベンチ入りされると試合が壊れてしまうことが強く懸念されました。ですから県総体出場が決まった時点で、私がAさんのベンチに入るつもりでいました。
そこに重ねて、以下のような実態を知ることになったわけです。
やはり、こんな人間にベンチに入ってもらっては困ると思いを新たにし、1回戦開始直前に顧問を制止してベンチ入りしました。危ないところでした、私が台に到着するのが2,3分遅れていたら別の結果になったかもしれません。会場の通路で渋滞が発生してAさんの到着が遅れてくれて良かったです。
1回戦はバック粒のカット型。
最初の2点はレシーブとドライブがオーバーしましたが力みはなく、ツッツキとドライブで正確に繋いで得点を重ねていきました。3-0で勝利。
年度が変わる辺りからカット攻略の方針を伝え、それに沿った練習をし練習試合でも試してきました。方針は以下の通り。
- 強打は極力避ける。変化にひっかかるのを防ぐため、柔らかいドライブで繋ぐ。
- ドライブでは回転をかけすぎないようにし、絶対に入ると思えるボールだけをスマッシュする。
- スマッシュについて、球速ではなくコース取りを重視する。相手がとりづらいところ、返球されても自分が追いつけるコースに打っていく。
- 深追いはせず、強打したら次のボールは正確に相手コートに入れる。
- 球速は並みで良し、打点を早くする。
緩いカット打ちを初めて練習してもらった時には「集中しづらくてやりづらい」と言っていた彼女ですが、ある大会で強力なカット型に当たり追い込まれたことがありました。強打を多用したことで変化につかまり、ネットミス・オーバーミスを繰り返したのです。
試合であれば選手は必死です。そこに上記のような方針を絞って伝えました。その時には、
- ドライブのコースは大きく散らさず、例えばフォアサイド内で少しずらすくらいで良い。
- 強打は出来るだけせず、正確に繋いでスマッシュできる球を待とう。
という二点を伝えたと記憶しています。
彼女はそれを実行しようと努め、最終的には敗れたものの1セットを取り返しました。
それ以来、対カットで強打に頼らず得点する方針に納得したようで、カットに対して正確にドライブを続ける練習を受け入れてくれるようになりました。
今回の1回戦に関しては、なんとか下準備が間に合ったなと、そういう思いです。レベルが上がれば強打もしていかなければいけない場面が増えるけれど、今の彼女には適した方針でした。それと同時に、最初は違和感のあったものを納得して受け入れ、それを自分のものにしようと練習した彼女の思考力・精神力が立派だったと感服します。
2回戦目は左利きシェーク裏裏。
技術的にはAさんが明らかに上でしたが、強打をミスしてAさんが精神的に揺れれば分からなくなる…そんな相手。県に進んでいるのだからそりゃそうですわな。
しかしながら1回戦に続き冷静にプレーを進め、ヒヤリとする場面もなく3-0で勝利。2セット目には11-1でセットを取りました。
この試合後、Aさんは「あまりの出来の良さにびっくりした」と語りました。落ち着いてプレーできたことだけでなく11-1なんてカウントに出来たことに驚いたとのことでした。
しかしながら、私には驚きはありませんでした。周りが正しく精神的なサポートをすることが出来ればAさんは実力を発揮することが出来る、ただそれがなされただけだと。
今までが、障害が多すぎたのでしょう。先生がベンチにいる、お父さんの姿を観客席に探してしまう、見つけてさらに焦ってしまう…。
後日Aさんとお話したところ、この日はお父さんのことが全く頭をよぎらなかったそうです。姿を探すこともなくただ目の前の試合に集中できたと、そう語ってくれました。
3回戦は、フォア表バック粒の異質攻撃型。
四天王寺の選手を模して育成されたとのことで、なるほどラケットを遠目に見ると剛力シリーズであることが窺えます。
初対戦でしたが、1年生の頃から全国へ進んでいたので相当厳しい戦いになると予想されていました。
サービスはしゃがみ込みサービスを多用。バック面で打球することが多く、右利きの順横系サービスです。粒高でサービスしていながら、きっちり回転がかかっているんですね。良くここまで仕込めるものだなと感心しました。
バックにドライブを送るとサイドスピンをかけたブロックを多用、甘いツッツキに対してはストレートにミート。これがまた直前で面がストレートに向くため、コースが読みづらいものでした。
始めの数本、Aさんはこのサービスに対してバックハンドでレシーブしていましたが、すぐにフォアハンドでボールの外側を取らないと横回転に負けると気付きチェンジ。このことによりレシーブが入る確率は格段に上がりました。
相手のフォア前にサービスを出すと甘いツッツキが飛んできたため、フォア前へのサービスを中心に組み立て第二セットでは8点を奪取しました。
最後のセットは11-1でしたが、8点を奪えたことには満足感を得られたそうです。
今回のAさんの試合は今まで観てきた中で一番立ち上がりが良く、1試合目の1セット目から落ち着いてプレーできました。
成績に関わらず泣いて大会を終えることが多かったAさんですが、「今日は、良かったです」との言葉とともに、すっきりとした表情で大会を終えました。
先生がベンチ入りしたとして、結果は同じになったかもしれません。
でも、結果として彼女が満足して終われたので私もいくらか役に立てたかなと思います。
Aさんから直接は言われませんでしたけれど、審判をしてくれた3年生がこっそり、「Aが(私)さんのこと探してました。『ベンチ入ってくれないかな~(>_<)』って」と教えてくれました。
彼女のような選手に信頼してもらえたのは光栄でしたし、2年間彼女の試合をそばで観ることができたことは幸せでした。
ダブルスについては後日追記しようと思います。
(つづく)