前回に引き続き、練習の大枠について考えていきます。
前回に比べると、具体的で詳細な部分になるかと思います。
サービス練習を念入りに
ゲーム練習や試合をしようとすると、サービスの重要性に気づきます。実際のプレーの半分は、自分のサービスから始まるからです。(残りの半分は相手のサービスから)
せっかくフォアハンドやバックハンド、ツッツキなどの打球練習をしても、思ったようにサービスが出せないと、それらの技術を活かす展開に持って行きづらくなります。
どんなサービスを練習すべきか、どういうポイントを意識して練習するのかについては、別の記事でまとめたいと思っています。
端的に言うと、「長くて速いサービス」を出せるように練習するのがオススメです。
練習というとついつい打球練習に意識が向きがちですが、試合の勝ち負けを大きく左右するのはサービスです。平日の短い練習であれば10~15分、休日の長い練習であれば30分はサービス練習に費やしてみませんか。
ただし、アドバイスをもらいながらでないとサービス練習は変化を感じられず、つまらない練習になりがちなので、指導者は練習のポイントや前向きな声掛けをする必要があります。
必要な基礎練習(≒ウォーミングアップ=共通のメニュー)
前回の記事(→【第7-1回】)では、全体に共通のメニューが必要かどうかを考えました。そこでは競技レベルが上がると個別メニューが増えるという話に終始していたので、ここでは全体に共通して必要なメニューについて考えます。
大きく分けると4つです。
- フォアハンド(上回転のボールを送る≒ドライブ or ブロック or スマッシュ)
- バックハンド( 同上 )
- フォアハンドのツッツキ
- バックハンドのツッツキ
これらを選手の競技レベルに合わせて調整し、ウォーミングアップまたは基礎練習とします。ただしこれは、十分に多球練習を積んで一球練習ができるようになってからでないと、効果は非常に薄いと考えてください。
難易度・複雑さ順にざっくり並べると、
- クロスのみ行う
- クロスとストレートをそれぞれ別に行う
- 半面対全面で行う
- 全面対全面で行う
まずはクロス、つまり台に対して斜めに送球するコース取りのみで行うのが良いでしょう。クロスで5往復以上できるようになったら、ストレート、台に対して並行(ネットを垂直に横切るよう)に送球するコース取りでも行ってみましょう。
3の半面対全面は、一方の練習者が全面に送球し、もう一方の練習者は全面に送られてくるボールに対応しながら、相手の半面に全て返す、という内容になります。クロスとストレートの両方に打ち分けられるようになると、この練習が効率的になります。この3を採用する場合は、半面と全面を練習者2人で交代してそれぞれ練習しましょう。
4の全面対全面では、練習者が何かポイントを掲げて練習することと、ボールのスピードを抑えることが重要です。ポイントを掲げて練習しないと、飛んでくるボールにただ反応するだけの打ち合いになってしまいます。どんなポイントでも良いので、何か意識して練習できるよう、必要であれば指導者が提案したり、選手に考えさせるような声がけをしたりする必要があります。ボールのスピードを抑えるのは、この練習があくまでウォーミングアップか基礎的な部分を確認することを目的としているためです。速いボールを全面で打つ練習が必要であれば、この練習の後の個別メニューで行いましょう。
ストレートに慣れよう
野球でのストレートは回転の向き・球質を指しますが、卓球ではコース取りを指します。、ストレートは
卓球では、多くの基礎的な練習がクロスで行われています。よって、初級者段階ではクロスにボールが返ってくることが非常に多くなります。
逆に言えば、意図的にストレートへ打てるだけでアドバンテージになります。日頃から少しずつストレートコースでの練習も行って、ストレートというコース取りを意識すること、思ったところにボールを送ることの両方を訓練しておきたいものです。
毎回の練習のウォーミングアップや基礎練習に、ストレートコースでの練習を取り入れてみませんか。
フォアからかバックからか
フォアとバックのどちらを先に教えるのか、という疑問もあるかもしれません。個人的にはどちらから教えてもいいというか、結局同時進行で覚えていくのであまり考えすぎなくても良いでしょう。ただし、私の選手・指導者としての経験を踏まえると、上回転に対する打法もツッツキも、バックハンドの方が早く安定する場合が多いと感じています。この違いには、バックハンドは身体の前でとらえる、つまり打球点やラケットの動きを視界に入れやすいため、修正しながら練習できて習得が早い、という因果関係があるのではないかと考えています。
フォアでもバックでも良いですが、どちらかが先に安定すれば練習相手として返球できる技術を獲得できます。そうなればその選手自身だけでなく練習相手の練習効率、ひいてはチーム全体の練習効率が上がるので、フォアとバック両方を練習しつつも、選手ごとに得意な方を優先して磨いてしまうのは良い戦略と考えます。指導者にとってもポジティブフィードバックを行いやすく、選手も自信を獲得できたり安心してプレーできたりというメリットもありますね。
ところで、ヨーロッパではバックハンドから教える…という噂が流布されていますが、どうも都市伝説的な面もあるようです。というのも、現在一緒に練習しているフランス人留学生に尋ねたところ、彼が在籍していたクラブではフォアハンドから教えていたし、少なくともフランスではフォアハンドから教わる方がメジャーとのことでした。バックハンドから教えるチームやクラブも存在するかもしれませんが、広く一般に、ということではないようですね。ドイツやスウェーデンではどうなのかも知りたいところです。
フランスの彼曰く、「ヨーロッパでバックハンドが強い選手が多いのは、単にフォアとバック両方上手い選手が勝ち残り目立っているだけ」とのことです。確かに生存者バイアスなのかもしれませんね。
不要な技術とは
卓球を楽しむという視点では、どの技術を練習してもよいのですが、一回でも多く勝ちたいだとか、試合内容をより良いものにしたいと思う場合は、技術に優先順位をつけて練習する必要があります。
そうなった時、もちろんできたほうが可能性は広がるが、時間的制約から切っていかないといけない技術は何かを考えます。
個人的には、優先順位の低い順から、
女子選手でチキータをやりたいと言い出す人は少ないと思いますが、技術自体に手首の強さが必要であったり、チキータをした後の展開が難しいので、初級者段階では不要ですね。ツッツキを練習しましょう。
カウンターは強打やループドライブに対して強いボールで返球することですが、これをあえて練習する必要はありません。ラリーの中で自然とカウンターのような当て方になることは全く問題ないですが、カウンターを練習するより自分のドライブを磨いたり、ツッツキを練習して相手に強く打たせない技術を身につけたりしましょう。
スピードドライブについては、浮いたボールに対して練習することは必要と思います。一方で、低いツッツキに対しては回転の多いループドライブを確実にできることを目指しましょう。
ロビングも、女子選手の中で興味を持つ人は少ないように思いますが、これもあえて練習しなくて良いですね。試合でロビングをされる展開にならないからです。逆に言えば、運動能力が明らかに高い選手やカット型の選手はロビングを練習しておくと、それだけで得点が見込める場合もあります。それでも、優先順位はツッツキやループドライブの方がはるかに上です。
ですので、ロビングに対するスマッシュも同様です。ただし、万が一相手にロビングをされた場合にどう対処するかを知っておくことは、負けないために重要なので、「守備としての、対ロビング」を練習しておくことは良いかと思います。具体的には、ブロックのように当てて返すか、打ちやすい高さでミスしない強さで打ち続ける練習です。
休憩時間の楽しみや、ちょっとした感覚遊びとして上記の技術を練習してみるのは良いことです。大切なことは、勝ちたい場合はその目標から逆算して技術に優先順位をつけ、計画的に練習をおこないましょう、ということです。
(おわり)