【第7-1回】初級者の練習形式や順序について

今回から数回に分けて、卓球を始めた中学生がどのような段階を経て練習していくのが良いか、学年差により技術レベルが異なる集団での練習をどうマネジメントしていくか、の2点について考えます。つまり、個々の練習メニューではなく、どのような形式や順序で練習するのが良いのかを中心に考えます。

個別の具体的な練習メニューについては、様々な情報をインターネット上で得ることができます。しかしながら、どの順番で練習をしていくのが良いのか、あるいは練習の形式や段階について言及されていることは少ないように思います。

学校の授業においては「めあて」から逆算して授業内容や活動の順番・構成を考えるように、部活動においても到達したい地点から逆算して練習の順番・構成を考えることで、より効率的に上達することができるはずです。

 

今回は、具体よりも抽象、大枠を考えます。

 

 

 

まずはマシン練習 or 多球練習から

初級者の練習において一番必要なことは、時間当たりに打つボールの数が多いことです。たくさんのボールを打つ中で、まずは打法や体の動かし方、ボールの飛び方を覚えていく必要があります。

よって、1球のボールを互いに挙げられます間は短くして、マシンを使うかまたは指導者や先輩が球出しをしての多球練習を多うべきです。多球練習のメリットをまとめると、以下の3点が挙げられます。

  1. フォームや力加減など、打ち方を意識して打つことができる
  2. 球質の揃ったボールを短時間で繰り返し打つことができる
  3. アドバイスやフィードバックを行いやすい

初級者段階では打法が不安定のため、相手が上級者であってもラリーを続けることが困難です。続いたとしても続けるだけの練習になってしまい、競技的に必要な打法の習得へ繋がりません。初級者段階でのラリー練習はボールを入れることに特に集中するため、打法へ意識を割ける脳のリソースが残らないからです。

競技的な打ち方を身につけるためには、練習者がポイントを意識しながら落ち着いて打球することが重要です。ラリー練習では、ミスをしてしまうと練習が途切れてしまう性質から、入れることに意識が支配され、打法が崩れやすいです。また、ミスする度に練習が中断する練習形式は、初級者段階において時間的な効率が良くありません。よって、1球を打ち合うラリー練習よりも、一方的にボールが飛んできてそれを打つことができる形式の練習が適しています。

 

半多球練習のご提案 ~1球練習への橋渡し~

ここまでは、初級者段階では多球練習が最適であることをお伝えしてきました。では、1つのボールを打ち合う実際のラリーへどう繋げていくのかを考えます。

 

多球練習からいきなり1球練習へ移行すると難しい場合が多いので、私は「半」多球練習をオススメしています。

これは、人による球出しでの多球練習にラリー的な要素を付け加えた練習です。

具体的には、多球練習で練習者が打ったボールを送球者が直接返球し、それをさらに練習者が打つ、という形式の練習です。この練習では、球出しよりも自然な、ラリーに近いボールを打つことができます。

(例1)送球者が上回転の球出しをして、練習者がフォアハンドで打ち、それを送球者が同じコースにブロックして、練習者がそれを打つ。

(例2)送球者が下回転の球出しをして、練習者がフォアハンドでループドライブし、送球者が全面にブロックして、練習者がそれを強打する

 

ただし、以下の二点に注意が必要です。

  • 送球者側に、打球技術が求められること
  • 練習の効率が、練習者の1球目の成功確率に依存すること

 

球出しと同様に、送球者が打球をコントロールできなければ、練習者は打法や動きを落ち着いて練習できません。部活動であれば、先輩部員など卓球歴の長い人の力を借りるなど工夫して行う必要があります。

また、多球練習と違い、練習者がミスしてしまうとその先の練習が続きません。多球練習での成功確率が6~7割になっていれば、1本目をきちんと入れる意識で練習できるという点で、この形式は有効です。一方で、多球練習で半分入らないだとか、入ってはいるが打法をもっと整える必要がある場合には、もう少し多球練習を行う方が良いでしょう。

練習者の段階や練習したいメニューによりますが、それらをうまく調整して行えば、たくさん打球練習でき、かつ実践的な展開を練習できる優れた形式でもあります。多球練習からラリーへ進む際の橋渡しとしても有効です。

ラリーへ進む前に、多球練習からの橋渡しとして「半多球練習」を挟んでみませんか。

 

1回の練習の流れ ~どの順序で何を?~

これも目的やゴール、つまり試合当日の動きや試合の中で何が起こるか、から逆算して考える必要があります。

試合では、サービス・レシーブから全てのラリーが始まります。試合当日は緊張するので、一試合目の一セット目、サービスが思ったように出せないことも起こりえます。当日の朝に会場で練習する時間があるとはいえ、試合の進行状況によっては練習から最初の試合まで1時間以上空く場合もあります。そうなると、朝の練習によって調子を上げたまま試合に入ることなど不可能です。

また、練習では様々な打球練習を行いますが、打法がある程度身についたら、サービスからその打法を使う展開練習も行うことになります。打球練習をしてからサービス練習を行うという順序に大きな問題はありませんが、「このサービスを出してレシーブがこう返ってくるから、こう打ちたい」というイメージを持って打球練習を行うことで、打球練習の効果は上がります。打球練習で意識すべきポイントを明確にするためにも、先にサービス練習をしておくことは有効です。

以上の理由から、普段の練習では体操をしたらすぐにサービス練習をすることをオススメしています。

 

  1. サービス練習
  2. (アップ・確認としての乱打)
  3. 多球練習やフットワークなど打法・動きの練習
  4. サービスから全面やゲーム練習などで、その日練習したことを確認

…という流れで練習すると、各練習が接続され、全体の効率・効果が上がると思います。

授業と同様に、どの練習をどの順番で行うとより良いか、考えてみませんか。

 

全体で共通のメニューは必要か

卓球を初めて最初の数か月~半年くらいは、共通のメニューが多くなるかと思います。できることとできないことが大抵似通っていて、目指すプレースタイルも明確ではないか大きく異ならないからです。

同じようなメニューで練習していても、半年~一年くらい経つと各選手に個性が出てきます。そのくらいの時期になると、全員が常に同じメニューで練習していくことは効率が悪くなってきます。

例えば、フォアハンドよりバックハンドの方が強打が上手い・やりやすい選手であれば、フォアはディフェンス、バックは攻撃という意識で行う打球練習があって然るべきです。上回転に対するラリーはできるが、ツッツキが甘くなってしまって負けてしまうような選手であれば、上回転のラリーをさらに磨きつつも、ツッツキが弱点でなくなる程度にツッツキを多く練習する必要があります。

よって、選手の技術レベルが上がるほど個別メニューが増える、卓球を初めて半年~1年ほど経つと、個別メニューの割合が増え始める、と考えるのが良いでしょう。

なお、サービスについても、各選手の得意やプレースタイルに合わせて別のサービスを練習することも必要になってきます。

 

もちろん、全員で同じメニューを練習する時間があっても良いと思いますが、目的、つまり試合から逆算して、共通のメニューが目の前の選手たちにとって必要かどうかを判断したいものです。

どのメニューをどういう狙いで練習するか、最初のうちは指導者が指定し練習させることが多くなりますが、いずれは選手自身でもメニューや狙いを考えられるよう指導していきたいですね。

 

 

(つづく)