我が校の一年生Aさんが、市総体にてスーパーシード二名を破って優勝しました。今回はAさんの主な得点源と、それに対しての対策を考えます。
この目的は、よりレベルの高い相手に対して試合をどう組み立てるか、得意を封じようと相手が対策を講じてきたときにどう展開するかという戦略的な準備をしておくことです。それと同時に、Aさんに敗れた我が校のエースBさんがどう展開を変えるべきだったか考え、Bさんのための戦略的な準備も行います。
SS1戦
思い込みを避けるため、まずは互いの得点となったプレーを書き出してみます。
各セットにおけるプレー内容
[第1セット] Aさんのサービスから。
※水色はサービスからの得点、赤はレシーブからの得点。
[第2セット] Bさんのサービスから。
(徒然メモ)
2-4になったプレーでボールが大きく場外へ飛び、ボールを探すのに若干の時間がかかる。台に戻ってきた二人、サーバーがどちらが一瞬分からなくなる。
[第3セット] Aさんのサービスから。
全体としてBさんが先に下回転を打ちそれをブロックで振り回されている展開が多い。特にバックへの鋭いツッツキに対してフォアで回り込んだ後に空いたフォアサイドをカバーしようと戻るため、Aさんから見るとフォアサイドだけでなくフォアミドルを狙うことによる得点が期待できる。
各セットにおける、サービス/レシーブからの得点数、得点率とサービスの種類分布
この数字だけを見ると、第1セットで互いに探り合いをし第2セットでは自分が有利な展開に持っていきやすいサービスを選択し始めたように思います。第3セットではそういう戦術的な選択の能力での差が表れた…と。ところがサービスの内訳を見ていくと、実際には違っていることが分かってきます。
以下、実際のサービスの種類の内訳です。
Aさんのサービスは第1セットこそフォアにも出されていたものの、第2・第3セットではバックサイドへの長いサービスに集中していきました。それでも第2セットまでは下回転以外のサービスも多用していましたが、第3セットでは「バックに下回転出して持ち上げさせればいいや」と戦術的に迷う余地がなくなったようです。第3セットになってフォアへの長い下回転サービスが使用されましたが、これはコースをバックに絞らせず、かつ持ち上げさせて大きめのラリーにしてしまえばいいという判断なのでしょう。全体として、得点しやすい展開へのサービスに収束していった印象を受けます。
一方Bさんは第2セットでサービスの幅が増えており、そのことでサービスからの得点率が上がったのかもしれません。しかしながらより有効なものを見つけ出せなかった、あるいはサービスを出した後の展開で焦ってしまったことが第3セットの点差に表れたと思います。
下回転を持ち上げてからの展開における得失点
第1,2セットは2点差でセットが終了しています。この1つの失点を得点に変えることができれば+2となり、この差をひっくり返すことができます。そのためのカギとなるのは、下回転を持ち上げてからの展開だと考えています。というのも、Aさんは試合に勝利したものの、下回転を持ち上げてからの得点率はお世辞にも高いとは言えないからです。対下回転ドライブそのものによる失点はBさんより少ないものの、ドライブが入ってからの展開ではAさん以上に失点しています。
Bさんは対下回転ドライブの成功率が低いように見えますがこれはAさんのツッツキが鋭いためで、元来Bさんは下回転に対するドライブは得意です。無理して早い段階でドライブせず、ツッツキ合いから打って行くことで対下ドライブの成功率を上げられれば結果は違ったはずです。Bさんと後日お喋りしたところ、「打っても返ってくるんです~;;」とのこと。簡単に返されるから、本来持ち上げるべきツッツキに対して強打しに行ってしまって失点する…という流れに乗った結果が第3セットです。
Aさんは三球目にドライブではなくツッツキを多用していました。これはBさんに先に打たせた方がいいという判断だけでなく、自分が無理して早急に下回転を打つよりツッツキ合いからチャンスを狙っていく方がいいという判断が効いているのだと思います。ただしAさんはバックハンドでも難なく下回転を打てることにより回り込む必要が必ずしもなく、そのことによる戦略的余裕があるとは思います。(バックから打たざるを得なくなっても、バックハンドで持ち上げることで両ハンドでのラリーに低いリスクで移行できる。)
具体的な作戦チェンジ案
以上の数字や考察から、まずBさんはどう戦略・戦術を変えるべきだったか考えます。地区総体でAさんレベルの選手と当たった時にも同様のものが利用できると思います。
①回り込んで持ち上げる展開を減らす
- バックからバックへツッツキを差し込まれる展開を、ツッツキして相手に持ち上げさせるチャンスと考える。
- 相手に持ち上げさせてからカウンターやブロックでフォアミドルへ攻め返す。
- 三球目攻撃を仕掛けたいならナックルや横回転系サービスを多めにし、浮けば打ち抜きに行く、レシーブから打ってくればカウンターやブロックでフォアミドルを突く。
- 自分が先に打つなら、バック深くに順横下からの展開は分が悪い。このサービスを出すなら相手に持ち上げさせる展開にすることを前提とする。
②下回転に対する打ち方、意識を変える
- 回り込んで持ち上げるならば、思い切り回転をかけるかフォアミドルに浅いループドライブを送るかして、簡単にカウンターやブロックをさせないようにする。
- 回り込みにかぎらず、下回転を持ち上げる際には相手のカウンターやブロックを待ち、それを狙い打ちするつもりで打って行く。
- 対下ドライブで打ちぬこう!ではなく、持ち上げておいて返ってくる上回転に対し連打するんだと考える。
- カウンターやブロックを狙い打ちする時、徹底的に相手のフォアミドルを狙う。
- シェークハンドに対して連打する際には同じコースを集中攻撃し、そのコースの中でドライブに変化を付けたり少しコースをずらしたりしてミスを強いる。
- 対上ドライブについてはただ速いボールではなく、長さ・回転・高さで変化を付けたり、カーブドライブにして最終的に相手のフォアミドルへ到達するような軌道を作ったりして得点を目指す。
まとめ
○バック深くに順横の下回転サービスを出す時は、相手にツッツキを持ち上げさせる展開にするつもりで。
○三球目攻撃を仕掛けるなら、回転がばれにくいように工夫しつつナックルや横回転サービスを使ってチャンスを作り、フォアミドルで仕留める。
○下回転を持ち上げる時はコースと長短を利用し、①カウンターで打ちぬかれない ②ブロックさせて狙い打てる ように打って行く。(ゆっくりとか、少し浅いとか、低いとか、回転が多いとか)
○連打するならコースは大きく変えず、球質に変化を付けてミスをさせたり、打ちぬくチャンスを作ったりする。
SS2戦
他校のエースCさんとの対戦で、大会一日目の団体戦で3-0で破った翌日の再戦でした。
ここでは団体戦、つまりAさんとCさんの初めての対戦での得点パターンやセット間でのアドバイスをまとめております。二日目の個人戦ではセットこそ3-2になったものの、それほど得点パターンとアドバイスに大きなチェンジはなかったためです。目だった相手のチェンジは、下回転系サービスが減らしてきたことです。レシーブが浮きがちになって三球目攻撃を強打されることが増えました。これに、Aさんが下回転を持ち上げる展開が増えた(増やされた)ことも、失点が増えた要因です。結果2セットを奪取されましたが、先に3セットを取りきったからOKです!点の取り方は間違っていない!
[得点パターン]
- バックサイドから下回転を持ち上げさせ、カウンターやブロックでコースを突く
- 大きなラリーに持ち込んで相手を下げさせ、バックサイドに集める。バックでミスが出ない時はバックに寄せてからフォアに強打。
[アドバイス]
- バックサイドに下回転サービスからの展開が有利。ツッツキレシーブされてもバックにツッツキを集めて先に持ち上げさせ、カウンターやブロックでコースを突こう。
- 相手がバックハンドで持ち上げてくれば球威が無いからカウンターチャンス。フォアハンドで回り込めばフォアサイドが空くからカウンターでもブロックでも、フォアサイドに返球できればいい。
- ドライブで一本繋ぎたい場面ではフォアに繋いでおけば、そこから大きいラリーに持ち込める。大きいラリーになれば君の方が得点出来る。
アドバイス1,2については第1セット終了後に伝えたもので、「相手がチェンジしてこない限りは方針はこのままでいいね」、という確認程度です。というのも試合開始してすぐにこれらのパターンをAさんが認識したようで 、第1セット終盤の時点で多用していたからです。
アドバイス3は第2セット終了後に伝えました。第2セットは相手が持ち上げて来る数が減ってフォアサイドを空けることも減りました。よって第1セットよりラリーが長くなる場面が増えましたが、台から少し離れての大きなラリーになれば8割方Aさんが得点出来ていました。相手が打ってこないなら大きいラリーに持ち込んでしまえということで、フォアへの軽打に対し相手が繋ぎドライブで返球してくることから上記のようなアドバイスをしました。
ベンチで第1セットを観ながら考えたのは、「王晧vs馬龍の試合みたい」ということです。王晧が馬龍の天敵であったことは有名ですが、王晧の馬龍攻略法と彼女たちの試合が重なったのです。つまりバックから打たせるとフォアハンドで回り込んでくる。そこを両ハンドで空いたフォアサイドに打ち込むことで王晧はラリーの主導権を握っていました。馬龍が回り込まなければバック対バックでは王晧が上回っているために、どういうルートをとっても王晧の得点率が上回りがちでした。
というわけで、王晧側のベンチに入ったつもりでアドバイスをしていたのでした^^
ところで、上記の対戦カードと対比されるのは王晧vs張継科です。張継科のバックハンドは高い威力を誇り、馬龍のように回り込まずともバックサイドから決定打を放つことができます。バック対バックでも張継科が王晧に有利を取れるため、馬龍戦とは打って変わって王晧は得点出来るパターンが見つけられなくなってしまいます。
今回はAさんの相手が二人ともフォアハンド優位の選手でしたので、バックから打たせてなんやかんや…というルートを取ることができました。しかし地区総体や県総体で両ハンドのバランスがいい選手、あるいは物凄い威力のフォアハンドを打ってくる選手と当たった時にどうすればいいのか…。まぁAさんのツッツキを一発でぶち抜けるような女子中学生はそもそもレベルが違い過ぎてチャンスが無いので、想定しようがないと思います。肝心なのは相手のサービスに騙されないようにして相手の強打を避け、自分が打つなり相手に持ち上げさせるなりして、とにかく自分の有利な展開に持ち込むことです。
本当はAさんに対する対策に対する対策まで考えるつもりでしたが、あまりに長くなってしまったのでここで一旦終わりにします。Aさんにはまだ二年間という時間がありますし…。
細かい推敲や誤字脱字の修正は逐次行っていこうと思います。
ここまでお読み下さり、ありがとうございます。
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(おわり)