新1年生の指導について part2 ~戦略・練習編~

前回、シェーク裏裏が最初はよろしいですよ、その後で分岐していくならこういう用具で…というお話でした。

 

今回はシェーク裏裏での育成期間における指導方法を、その先に見据えるプレースタイルの予想図に触れてから記述していきます。

 

 

 

 

プレースタイル予想図

目指すプレースタイルの核となる戦略としては、

 

  • ツッツキ合いになるのを避ける
  • 相手に良いレシーブをさせない
  • 3,5球目で先手を取る
  • 5球目までで得点できなくても、自分優位の状態でラリーに持ち込む

 

中学女子の試合で多いのが、ツッツキ合いになってしまって膠着状態に陥ること。こうなってはどちらが勝つのか分からず、ツッツキ合いでミスしようものならどんどん自分の精神状態を追い込んでしまう。さらにはせっかく練習したドライブを活かしづらい。

であれば、ツッツキ合いになりづらいサービスから始めればよい。

 

”良いレシーブ”とは、こちらが攻めていきづらいレシーブ。選手や戦型によって変わるが、例えば回転が多い、低い、強打された、タイミングが早い、逆を突かれた、など。

そうさせないためには、サービスのコースや回転を読まれないよう同じようなフォームから出し分けること。そうすることで相手の反応を遅らせ対応の幅を狭めて、”合わせるだけのレシーブ”、つまり当てるだけ・入れるだけのレシーブを強制する。

それに対してドライブや強打、スマッシュで攻め込んでいく。

 

後述するが、「後ろにおいて、ボールが来てから大きくスイング」するドライブや強打で、得点率を上げつつ失点率も下げる。そうやって自分から攻め込み、5球目までにラリーを終わらせてしまうことを目指す。スイング方向や当て方が違うだけで、裏も表も同じ。(だだし中国ラバーはテイクバックがある程度必要、ペン粒のフォアは後ろにおいてボールが来てから小さくスイング。)

 

 

まずは同じような戦型を目指して同じような練習を

指導を始める前段階で、全員を同じようなプレースタイルにはめるように育てるか、多様性を重んじて育成するかという議論があるが、まずは同じようなプレースタイルを目指す。

 

もちろん練習を進める中で、「あなたはここはこうした方が良さが出る」とか、同じボールを出すのにも「あなたはこういう意識・こういう打ち方をすると良いボールが出る」とか、そういうのはあるけれど。

君は身長が高いからカットだ、動くのが遅いからペン粒だ、ということはしない。これらは攻撃型として活躍できる可能性を、チャレンジする前から奪うことだからだ。ドライブやスマッシュで勝てるならその方がいい。効率がいいし、爽快感があるから満足度が上がりやすいからだ。

 

目指すプレースタイルを画一化しておく理由はいくつかあって、

  • そのプレースタイルでやっていけそうならそのまま、それでだめなら別のスタイルへの移行や用具変更を検討すれば良いから。まずは、最終的に最も効率の良いものを目指した方が良い。
  • どんなプレースタイルになるしろ重要となる打法を身に付ける期間なので、個性を出すのは後でも良いから。(個性は放っておいてもある程度出る。禁止するわけではない。ボールが入ったり勝てたり満足度が上がっていくなら何でもよい。)
  • 女子の一般的な身体特性や初心者から勝つことを考えると、多用する技術の幅を少なくしてその質を上げた方が良いから。
  • 互いに手本となり、教え合いの発生が期待でき、卓球への関心が高まるから。(戦型が最初からバラバラだとこうはいかない。)

 

 

右利きと左利き

同じプレースタイルを目指すとは言え、利き手によってそれは異なる。

 

◎右利き

巻き込みやバックハンドサービスから、相手に”合わせるレシーブ”をさせて先手を取り両ハンドでラリーに持っていく。

 

◎左利き

順横系のフォアハンドサービス中心で右利きに対する優位性を発揮しやすくし、右利きに比べるとフォアで攻め込む割合を高くする。左であることを活かす。

 

 

右利きが順横系のFHサービスを出すとツッツキ合いになりやすい一方で、左利きが同じことをしても右利きにとってはラケット角度を作りづらいので甘いレシーブになりやすい。だから順横系を多用できるし、その回転によってレシーブは左利きのバック側に集まりやすくなる。回り込めれば台のないところへ大きく踏み込めるので、威力のある3球目攻撃をしやすい。

 

このことは世界トップの女子選手を見れば顕著である。右利きの選手は対右選手でほぼ巻き込みを使うのに対し、左利きの選手は右利きに対して順横系を多用する。

 

左利きがフォア優位を目指すのは、相手のやりづらさだけを考えてのことではない。

左利きは右利きと練習する際、まずはバッククロスでフォア打ちを強いられることが多い。つまり、バックサイド~フォアミドルくらいの位置でフォアハンドを振ることに慣れることが容易なのだ。だから左利きにはフォアミドルを得意とする選手が多く、このことからフォア2/3程度はフォアで打っていく癖が付けやすい。

 

 

練習の内容

練習すべきは、

  1. サービス
  2. フォアハンド
  3. バックハンド
  4. F/Bのツッツキ

 

 

1.サービス

まずはフォア打ちの時に出すような、なんともないフォアのロングサービスが思ったところに思ったような速度で出せるようになること。フォアの巻き込みについてはそれを始点にして派生していく。

 

それが出来るようになったころには、私の弟子たちがサービスを教えられるくらいには成長しているだろう。1年生は彼らにお手本を見せてもらい、このサービスはこういう風に出す、こういう感じで出せばこのサービスとこのサービスが分かりづらい、このサービスの後はこういう立ち方でこういうレシーブを待つ…などの詳細を教えてもらえばよい。

 

バックサービスについては…肘ごと後ろか横に引っ張ること、打球の瞬間にラケットヘッドが下に向いていることなどがポイント。

 

 

2~4について、とにかく最初は多球練習。多球練習の段階としては3つある。

①止まって打つ ②動きながら規則的なボールを打つ ③ランダムなボールを打つ

 

http://livedoor.blogimg.jp/worldrubber-pendora/imgs/2/e/2e9f3a9c.jpg

 

まずは止まって、同じ場所に送球されるボールに対し打球して、思った場所に思ったようなボールが行くように。それが出来るようになれば1球での練習が”成立する”ようになる。動かず打つ練習であれば、台が少なくても送球できる人間が2人いればクロスで多球練習できる。

ある程度感覚が分かってきた段階で、②動いて打つ 多球も取り入れていく。2点の切り返しや1点での切り替えし、回り込みなど。

 

 

2.フォアハンド

最初の最初は上回転のボールを送球する。まずはボールが飛んでくる道をラケットでふさぐイメージで、ボールをラケットに当てること。この時肘が身体にくっつく人が多いので、肘は身体から離して”斜め前”にあるようにする。(肘が胴体の真横にあると、離れていたとしてもボールが前に飛んでいかない。)

当たるようになったら、力を抜いたままスイングを大きくさせ、ボールが相手コートに入る力加減を覚えさせる。この時点では回転はかかっていなくても良いが、若干上回転がかかっているかは要チェック。つまりカット気味になっていないように。

 

ボールを相手コートに入れられるようになって来たら、ナックルのボールを送球する。上回転と違い、ナックルに対してはきちんとボールに力を伝えないとボールは前に飛ばないし、自分でスイングしないと弧線を描かないのでネットを超えない。

上回転ばかり打たせると、当てて返すだけの癖が付く恐れアリ。

じゃあ下回転でいいんじゃないの?ということになるが、下回転だと今度はテイクバックを大きく取りすぎる癖が付く恐れアリ。多球だとそれで入っても、将来サービスから動いて打つことを考えると、そんな悠長にテイクバックを取ることは難しい。

何よりテイクバックが大きいと、ミスが増える。

一旦ラケットがボールの通る道から外れるのでそもそも当たらなかったり、テイクバックをしたことで力みが生じてオーバーしたり、粒やカットのナックルに対して対応できなくなる。

後ろに置くだけ、と考えれば力も抜けるし空振りは減るし、置いてから時間が無ければブロックすることもできる。

 

ただし、確かにテイクバックを大きく取るほど球威の上限は上がる。大きくテイクバックを取っても正確にインパクト出来る技術力が身に付いたら、テイクバックを活用していこう。

 

ナックルに対して”振り切る”練習を重ねておくことで、どんなボールに対しても振り切れるようになる。後ろにおいてボールが来てから振り切る癖が付けば、下回転打ちはナックル打ちの延長に過ぎない。スイング方向が若干上になるだけで、感覚としては同じである。

 

練習者は、フォアブロックをする位置よりは少し後ろ、身体の横よりは少し前あたりにラケットを”置いておく”。この時多少棒立ち気味でも構わない。

腕と肩と膝の力を抜いておいて、ボールがラケットに当たるかな…くらいまで待って(=引きつける)、そこから大きくスイングする。肘が顔の前に来るくらいまで振ってよい。

 

ただし人によってはコンパクトなスイングの方がスイングスピードが出る人もいるのでその辺は様子を見て。

 

 

ナックル打ちがある程度入りだしたら、練習者が打ったボールを送球者がブロックしてあげて連打させることにも挑戦させる。

ナックル打ちの後の上回転打ちは、後ろにおいてボールが来てから振り切ることは同じ。違うのは後ろに置くときのラケット角度と振り切る方向、飛ばすイメージ。

ナックルに対して自分がドライブしているのだから、相手がカットや粒でなければ次は上回転を打つことになる。だから最初からそれを想定した角度でラケットを置いて、ナックル打ちよりもやや水平に振り切る。イメージは上から下に”打ち降ろす”イメージ。相手コートに吸い込まれるような軌道をイメージさせる。

 

 

3.バックハンド

後ろに置いて…という基本方針はフォアハンドと同様。

バックハンドについてはブロックの練習からスタートするのが良い。送球者がドライブを送り、それをブロックさせる。裏ソフトであれば力を抜いて頂点に達する前に正しい角度で当てれば”何もしなくても”ボールは返る。それを体感させれば力を抜いてスイングできるようになる。

ブロックの際、ラケットヘッドは真横を向くくらいに。そのためにはラケットと肘の高さを同じにし、前後の位置も同じにすること。そしてボールを送りたい方向へ身体ごと向いて、体とラケットを平行にする。

 

ブロックが出来たらナックル打ちへ。

肘を支点にして、ボールが当たるくらいまで待ってから振り切ること。振り切った後にラケットヘッドはボールを送りたい方向へ向くようなイメージ。

振り切ろうとすると腕が内転して脇が締まってしまう人がいる。そういう人にはフリスビーを投げる動作をイメージさせたり、フリーハンドでラケットハンド側の二の腕を掴ませた状態で打たせたりする。あるいは手の甲をネットの根元方向へ向けるようにさせる。

 

腕の動きに問題がないのにミスが出る場合は、ボールが来るまで待てていないために力がボールへ伝わっていないか、ラケット角度が下を向きすぎているか、棒立ちで下半身の力を使えていないか。

それぞれ、より長く待つ、上体を床と垂直くらいまで起こす・ラケット角度を立てる、膝の力を抜いて上半身の高さを下げる…により解決を図る。

 

 

4.ツッツキ

ツッツキはラリーのためではなく、レシーブのための技術である。あるいは打てないボールへのつなぎの技術、と思って練習する。

だから50往復とか100往復するような練習はしなくて良いが、20往復くらいは出来るような安定感が中1の冬くらいまでには身に付くと良い。

 

 

 

(更新中)