1.手段を目的化する”教育”の結果
2.勝ちを目指すチームか、仲良しチームか
3.全国を目指す苦悩
4.意識・行動か目標のどちらかを変えないと不幸になる
手段を目的化する”教育”の結果
自分たちの試合の準備そっちのけで男子チームの応援をしたお話をしましたが、こういう状態を作り出したのは顧問の普段の言動に大きな原因があります。とにかく”ちゃんとすること”が大好きな管理型の教員で、大きな声を出して応援することが良いこと、喋っている暇があったら応援しろ、みたいな謎の応援信仰をお持ちです。そういう人間の下で部活動が行われるわけですから、生徒たちは段々洗脳されていって今回のような勝つチームとは思えない出来事が起こるわけです。
男子チームを応援したことそのものに問題があるとは思いません。中には次の対戦相手を観ると緊張してしまうとか、応援して自分の気持ちを盛り上げて臨みたいとか、そういう人もいるでしょうから。
しかしながら今の彼らは全員で揃って応援しており、応援するしないに関する個々人での判断が欠落しています。もう完全に思考停止、これでは顧問教員と同じです。そのことに気付いてもらって、それぞれに考えた上で行動を選択してほしいものです。
それに、男子チームといっても学校が同じと言うだけですね。同じ体育館で練習しているものの直接打つということもないし、お互いのプレースタイルや特徴だって対して知らないんですから。それで大会の時だけ声出して応援です!ってやったって、そんなの誰でもできますわね。そこに本当の応援はないわけです。
声を出すばかりが応援の形でもございません。今回のような状況であれば男子チームを”信頼”して、「勝ってくれることを信じる。私たちは次の対戦相手を観て勝つための準備をする。」という考え方の方が本当の応援に近いと思うのですけれどね。
勝ちを目指すチームか、仲良しチームか
こういうことを言いますとね、顧問教員はこう言うわけです。
「勝つことだけが大事じゃない。応援は先輩たちが作り上げた伝統だから。コーチの立場として、卓球の技術的な話をしてほしい。」
なんて頭の悪い考え方なんだ、本当に馬鹿なんだなぁと私は思うわけです。伝統だからというのは行動する際の根拠としては弱いし、応援も卓球の技術に含まれるし、県団体優勝はその教員が押し付けている目標なんですもの。
目標が高すぎるなぁ、本気で言ってるのかなぁと思って選手たちに確認したところ、「最初は県ベスト4と言った。そしたら『え、ベスト4でいいの?』と先生から言われて、じゃあ優勝で…と変えた」というのが真相のようです。
ふーん、って。もう一回言ってもらっていいですかね、「勝つことだけが大事じゃない」って。
口で言ってることとやってることが真逆で失笑しますねぇ。それでいて、まるで私が勝つことばかりを重視しているような口ぶりなんですね。私は勝ったことを褒めたことはあっても負けたことに関して責めたことは一度もないし、勝ち負けより内容の話の方が断然多いですけどね。そういうことは選手にも保護者の方にもご理解いただいているので、相変わらず顧問が一人だけおかしなことやっていると。
どちらかにすべきですね。つまり本気で勝ちを目指すチーム作りをするのか、仲良しチームで行くのか。
前者であれば応援よりも自分の準備を優先するよう指導すべきですし、膝立ちで応援させるなんてもってのほかです。伝統(笑)である応援によって勝ちが手を掠めていくこともあるわけですからそこも選手と一緒に考えないといけません。
県団体優勝を掲げるのであれば、県で勝つための技術的な指導ができ、段階的なレベルアップから最終的な完成図まで描ける能力も監督として必要になります。そういうのが全くなく、中学で2年ほど卓球を齧ったくらいでよくもまぁ県団体優勝を押し付けられるなと。これでは素人と全く変わりませんよ、そんな簡単に勝てるもんじゃあないんだから。前々から感じていましたが、顧問はすごく浅いところで卓球を舐めてますね。
全国を目指す苦悩
私が週一程度練習相手を務める、全国ホープス経験者のAさんがいます。現在中学1年生です。彼女の苦しみを我が校の選手たちが知ったら少し行動が変わるかもしれません。顧問教員含めてお話ししたいな、と思うような出来事がありました。
地区総体を終えてから数日後のレッスンで(私は単なる練習パートナーで、コーチは別の方です)、Aさんがひどく泣いているのを見かけました。その時私は別の選手の練習相手をしていたので、「何か上手くいかなくて泣いているのかな」くらいに思っていました。
後日同じレッスンを受けていたBさんから、Aさんが「全国大会に行けないなら、バレエを続けていれば良かった」と言って泣いていたと聞きました。
Aさんは中学に入るまで卓球とバレエを両立して習っていました。卓球は全国に出られたし打つのは楽しい、バレエは大会はないけれど身体を動かすのが好きだから楽しいということで続けてきたそうです。しかし中学入学に辺り、どちらかを選ばないといけない状況になりました。本当はバレエも続けたかったけれど、卓球でまた全国に行くために辞めたのだそうです。バレエを辞めることになった時にはすごく泣いた、とAさんは以前私に語ってくれました。
こういう経緯を知っていたので、今回のAさんの発言は大変重いなと思うわけです。つまりこんな苦しみを味わうんだったら、卓球ではなくバレエを選べばよかったと、そういうことですから…。これに中1で耐えていかねばならないと思うと、競技的な道というはひどく険しい道です。かつて私が大学の同期から聞いた、「楽しんでいたら勝てない」という言葉の重みも増してきます。大学でも競技として続けていた彼女がその時疲れた表情で寂しそうに笑ったのを今でも覚えています。
Bさんは我が校の選手の一人で中学スタートなのですが、「全国に出た選手でもあんな悩みがあるんだ」と驚いていました。
これだけ苦しんでいるAさんでさえ、県総体に出れば1,2回戦で0-3でふっとばされるわけで、その上に行く人たちはそれはもう毎日必死に練習しています。県団体優勝というのは、そういう選手を1人2人擁しかつ技術的な指導が出来る顧問のいる学校に勝とうということを意味しています。本気でそれを口にするなら、相当の覚悟と意識・行動の変革が求められます。それでもいいの?ということを考えてもらうためにも、Aさんの名前は匿名にしつつこの話を選手たちに伝えたいと思います。
出来れば私は選手たちをそういう競技的な方向に押しやりたくはありません。Aさんの苦しみのように、本気になればなるほど痛みを伴うからです。県団体優勝という目標からすると今のチームはぬるい、これは確かです。でも、その辺の中学校や1年前の彼らに比べればよほどしっかりやっています。そういう見方をすれば、今の意識・行動でも十分立派です。だから目標を下げて、現実的に達成可能なものにしてほしいという思いが強いです。
意識・行動か目標のどちらかを変えないと不幸になる
目標を変えず意識・行動を本気で変えるか、目標を下げるかのどちらかです。どちらもせず今のまま行けば、選手たちは不幸になるでしょう。
仮に県団体ベスト8で終わったとして、客観的に見たら立派です。そこには県内で8校しか入れないのですし、もう簡単に勝てるような相手はいませんから。しかし目標が県団体優勝であれば、非常にがっかりしてしまうでしょう。「何も達成できなかった」という思いで中学校の部活動を終えることになります。そもそも目標が達成可能でないものだったにも拘らず、です。
目標と夢は違います。目標は必死に努力すれば届く可能性が十分にある高さに設定すべきです。遠すぎる目標では人は頑張れません。無気力になるだけです。
こういうことも含めて2年生全体にお話しないといけません。本来であれば顧問教員の役割と思いますが、いかんせんスポーツに関しての造詣が浅すぎます。
顧問を教育しないといけませんよ…。うーん。
(おわり)