大学の監督がしばしば、「チェンジや!」と口にしていました。
チェンジするのは卓球に関することに限らず、変えたほうが良いと思ったことはすぐに変えるのだ、というニュアンスで言っておられたのだと思います。
監督の言葉のいくつかは私のお気に入りのフレーズとして印象に強く残っていて、今回はそのうちの一つです。
戦型をチェンジや!
秘密練習に参加している、左利きシェークバック粒の2年生がいます。
ブロックマンⅡにライガン厚、カールP3αOX。
打球感覚が良くフォアハンドの威力があり、身長も高めです。これらの長所を活かすには、バックでもスピードのあるボールを出せたほうが良い。
せっかくフォアで強打しても、バックにブロックされたらまた粒でスローボールを送ってやり直しです。彼女なら、フォアからのバックハンドを振った方が簡単に勝てるはずです。
バックに粒を貼っていることが彼女の可能性を奪っているのではないかと最近は考えていて、今年の4月頃から「カデットか新人戦が終わったタイミングで、用具・戦型を考えよう」という話をしていました。
昨日の秘密練習で、ボールを弾くのではなくドライブでくっつけて飛ばす感覚を得るために、台から少し離れてドライブする多球練習を行いました。
なかなか上手にできるものの、やはりブロックマンでは力を入れざるを得ず、しばらく打った後で弾みのある用具で同じことをしてもらいました。
用具は別の選手の持ち物で、馬林ハードカーボンにライガン厚、ブースターSA中。
驚いたことに、今まで粒高しか使ってこなかったにも拘わらず、きれいなバックハンドが振れたんですね。小学生スタートの選手と見比べても劣らないような整い具合です。
対上・対下のバックハンド、ショートサービスに対するフリック、ツッツキ、ループドライブ・スピードドライブに対するブロックのすべてに問題がなく、今すぐにでもそれでゲームできちゃうんじゃない!?くらいの出来です。
これはまさに、「チェンジや!!」状態。
異質攻守型から、異質攻撃型へチェンジや!
この子に粒高を貼らせ、守備的なプレースタイルにしようとしたのはどこのどいつだと。何を以て粒高を貼らせたんだ、頭がおかしいんじゃあないかと。
本人はあまりの出来の良さに戸惑いつつも、バック表への変更に高い関心を持ったようです。そもそも粒高でやっていくことに難しさを感じてきており、「最初のうちは粒で返しているだけで勝てたけど、最近はそういうのも減ってきて…」と。ラケットの弾みの良さにも驚いたようで、打つのが楽しそうです。
早速おうちの人に、ラケットを買っても良いか相談してくるそうです。
彼女の中で唯一気がかりなことは、ダブルスを組んでいるパートナーのために粒高を貼っていたほうがいいのではないかということです。
確かにダブルスでは相手に粒高が一枚混入するだけで、ベンチも選手も考えることが増えます。二人とも両面裏なら考えることが減って、その点で気楽です。
そうは言っても、パートナーのために卓球をするわけではありません。まずは自分のシングルスが最優先です。そもそもダブルスという種目自体がおまけのようなもんなんですから。
それに、パートナーも中学で卓球部に入部してから近隣の卓球スクールに通いだすような選手ですから、新人戦ではシングルスで出ることを希望するのではないかと見ています。そうなれば、粒高をわざわざ使う必要はもうどこにもないわけです。
ある程度裏や表でやって、それでダメならブロックで戦って、それでもダメならカット。それでどうしようもないなら前陣の粒高もやってみると。そのくらいのとっておきでいいんですよね。
Xia氏の「卓球は相手の時間を奪うスポーツ」理論を借りれば、バックに粒高を貼ってプレーするだけでは時間を奪えません。球速が遅い分、裏や表では出せない球質を送って、相手の判断する時間を奪うしかありません。そのためには、上下左右の4方向+斜めで計8方向にスイングできなくてはいけません。
もっと早い段階で、私が替えさせていれば良かったな、申し訳ないなという気持ちでおります。今までの時間は何だったんだと。
だからこそ、チェンジや!と。すぐにでも替えられるならその方がいい。
(おわり)